1994 Fiscal Year Annual Research Report
チンパンジーの高次視覚情報処理における大脳半球機能差と階層性
Project/Area Number |
06260222
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松沢 哲郎 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60111986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友永 雅己 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (70237139)
藤田 和生 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (80183101)
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Keywords | チンパンジー / 高次情報処理 / シンボル操作 / 階層構造 / 人工言語習得 / 大脳半球 |
Research Abstract |
チンパンジーの高次情報処理の特性を非侵襲的な手法によってヒトと直接に比較し、ヒトに固有の情報処理様式とその系統発生的起源を、比較神経科学・比較認知科学の視点から明らかにすることを目的とした。本研究では、視覚性シンボルの習得訓練を受けてきたアイ・アキラの2個体と、未経験の若いチンパンジー4個体の計6個体のチンパンジーを主たる対象として、チンパンジーのもつ認知機能の神経科学的側面を、大脳半球機能の側性化(Lateralization)という視点から検討した。とくに視覚のシンボルのもつフィジカル・コーディング(物理的特性の知覚)とセマンティック・コーディング(意味的な理解)という「シンボル操作」の階層構造という視点から捉えた。 昨年度開始したシステムを運用し、人工言語習得の研究を継続してきた合計6個体のチンパンジーを主たる対象として、ヒトとの比較研究により、以下に述べる大脳半球機能の左右差と情報処理の階層性について実験的に分析した。ラテラリティー(高次情報処理における大脳半球の機能的非対称性)については、これまでヒトの健常者や分断脳(split-brain)患者を被験者として、あるいは分断脳手術をしたマカクザルを被験者として研究されてきた。本研究ではチンパンジーを被験者として、タキストスコープによる視覚シンボル(図形文字、漢字、数字などの)認知にみられる左右の半視野差を検討するための予備実験として、チンパンジーの顔認識を調べた。コンピューター用タッチパネルを導入し、既存のシステムの画像処理能力を高めた新システムを新たに作製した。シンボル操作と概括する上述の高次認知機能をひきだす場面は、具体的には、見本合わせ場面である。アイは、11の色名漢字(赤・橙・黄・緑・青・紫・桃・茶・白・灰・黒)を識別した。そこで漢字それ自体の物理的特性にもとづく識別課題(フィジカル・コーディング)と、漢字の意味的情報処理課題(セマンティック・コーディング)について、ストループ干渉課題で検討した。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 松沢哲郎: "チンパンジーの研究は何の役に立つか" 発達. 57. 104-111 (1994)
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[Publications] 松沢哲郎: "チンパンジーの文化" 発達. 59. 105-109 (1994)
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[Publications] Fujita,Katuo: "Visual preference for closely related species by Sulawesi macaques." American Journal of Primatology. (in press).
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[Publications] Tomonaga,Masaki: "Transfer of odd-item search performance in a chimpanzee(Pan troglodytes)" Perceptual and Motor Skills. 80. 35-42 (1995)
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[Publications] Tomonaga,Masaki: "How Laboratory-raised Japanese monkeys(Macaca fuscata)perceive rotated photographs of monkeys Evidencefor an inversion effect inface perception." Primates. 35. 155-165 (1994)