1994 Fiscal Year Annual Research Report
小脳プルキンエ細胞における抑制性シナプス長期増強の分子機構の解明
Project/Area Number |
06260237
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
狩野 方伸 自治医科大学, 医学部, 講 (40185963)
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Keywords | 小脳スライス / パッチクランプ / 抑制性シナプス / 長期増強 / GABA受容体 / Ca^<++> / calmodulin-dependent protein kinaseII / fura-2 / 細胞内Ca^<++>濃度 |
Research Abstract |
本年度は以下の3項目について研究を行った。 1.Ca^<++>/calmodulin-dependent protein kinaseII(CaM-KII)活性化によるGABA電流の増強について 生後約2週齢ラットの小脳スライスプルキンエ細胞からwhole-ceII patch clampを行った。単離CaM-KIIをカルモジュリン、Ca^<++>、ATPγS存在下で自己燐酸化させ、活性化型としてパッチピペットからプルキンエ細胞に注入した。whole-ceII記録開始5分後から2分毎にバスにGABA(2-5μM)をあたえて内向きのクロライド電流をモニターした。対照として熱処理して変性させたCaM-KIIを同時に注入する実験を行った。活性化型CaM-KIIを注入するとGABA電流の振幅が増大し、記録開始20分後には5分後の値の約150%に達した。また、抑制性シナプス後電流(IPSC)の振幅も同様に増大がみられた。一方、対照群では、GABA電流およびIPSCの振幅に変化はなかった。 2.ホスファターゼ阻害剤の効果について。 タンパク脱燐酸化をホスファターゼ阻害剤の calyculin A (1μM) を用いてブロックすると、GABAによる電流応答が増大した。vehicleのみの対照実験では電流振幅にほとんど変化はなかった。 以上の結果はプルキンエ細胞のGABA_A受容体の反応性はCaM-KIIによる燐酸化とホスファターゼによる脱燐酸化によって調節されていて、一過性Ca^<++>濃度上昇に引き続くCaM-KII活性化とそれによる燐酸化がIPSCの長期増強に関与することを強く示唆する。 3.長期増強誘発時の細胞内Ca^<++>動態の解析 長期増強の誘発には抑制性介在ニューロンの電気刺激とプルキンエ細胞のパルス状の脱分極の組み合わせが有効であるが、その際の細胞内Ca^<++>動態(Ca^<++>transientの振幅および時間経過)をfura-2を用いた細胞内Ca^<++>濃度測定により検討した。その結果、4Hzの組合せで細胞内Ca^<++>濃度が200nM程度に上昇すると長期増強が起きるが、1Hzの組合せで細胞内Ca^<++>濃度が100nM以下では起きないことがわかった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] A,Aiba et al.: "Deficient cerebellar long-term depression and impaired motor learning in mGluR1 mutant mice." Cell. 79. 377-388 (1994)
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[Publications] M,Kano: "Long-lasting rebound potentiation of GABAergic inhibitory synaptic currents in cerebellar Purkinje cells" Biomedical Research. 15,Suppl.1. 62-72 (1994)
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[Publications] M,Kano: "Calcium-induced long-lasting potentiation of GABAergic currents in cerebellar Purkinje cells" Japanese Journal of Physiology. 44,Suppl.2. S131-S136 (1994)
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[Publications] M,Kano: "Plasticity of inhibitory synapses in the brain:a possible memory mechanism that has been overlooked" Neuroscience Research. 21. 177-182 (1995)
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[Publications] M,Kano et al.: "Ryanodine receptor-mediated calcium release in rat cerebellar Purkinje neurones" Journal of Physiology. (in press). (1995)
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[Publications] 狩野 方伸: "佐藤昌康/編、ブレインサイエンス最前線95" 講談社サイエンティフィクス, 12 (1994)