1994 Fiscal Year Annual Research Report
テラトーマ発症におけるc-Kitとそのリガンド及び新規キナーゼタンパク質の関与
Project/Area Number |
06281205
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松居 靖久 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (40241575)
|
Keywords | テラトーマ / 始原生殖細胞 / c-Kit / Steel因子 / トランスジェニックマウス / プロテインキナーゼ / 増殖因子 / 受容体 |
Research Abstract |
テラトーマは生殖細胞に由来する腫瘍で、特定の系統のマウスに高率に生ずることが知られているが、その発症の分子機構は明らかでない。本研究では、始原生殖細胞の増殖制御因子であるS1因子と、そのレセプターであるc-Kitの過剰発現がテラトーマ発症の原因となるかを調べることを第1の目的としている。そのために生殖系列で特異的に発現するoct-3遺伝子の上流約2Kbpを含むDNA断片をマウスc-kitcDNAにつないだキメラ遺伝子を用いてc-Kitを始原生殖細胞で過剰発現するトランスジェニックマウスを作った。得られた8系統のトランスジェニックマウスのうち5系統で、導入した遺伝子の精巣での発現が見られた。現在これらの始原生殖細胞の初代培養を試みている。予備的な実験結果では、正常マウスに比べてトランスジェニックマウスでは細胞数の増加が顕著であることが示唆された。またこれまでにEF-1α遺伝子プロモーターとS1因子cDNAによるトランスジェニックマウスも得ているので、両者の交配によりテラトーマが発症するかどうかを調べていく予定である。 また、本研究の第2の目的として生殖細胞や、その支持細胞で発現する未知のキナーゼ遺伝子をクローニングし、同様にテラトーマ発症との関連を明らかにすることをめざした。始原生殖細胞由来の細胞株であるEG細胞を材料に、キナーゼの活性領域の保存配列に対するプライマーを使ってRT-PCRを行い、既知のものを含む20種類のキナーゼをコードするcDNA断片を得た。このうち、成体での発現が精巣、卵巣及び脳にのみ見られた、レセプターチロシンキナーゼSky/rseについて、全長をコードするcDNAをクローニングし、さらにin situ hybridization法により発生過程及び生殖巣での発現を調べた。その結果、発生過程から生後にかけて、主に生殖細胞の支持細胞で発現していることが明らかになった。
|
-
[Publications] Coffey,R.J.: "Acceleration of mammary neoplasia in transforming growth factor α transgenic mice by 7,1-dimethylbenzanthracene." Cancer Research. 54. 1678-1683 (1994)
-
[Publications] Terajima,M.: "Stracturol organization of the mouse glycophorin A gene." J.Biochem.116. 1105-1110 (1994)
-
[Publications] Kato,S.: "Molecular cloning and expression of mouse Mg^<2+>-dependent protein phosphatase β-4 (type2Cβ-4)," Arch.Biochem.Biophys.(in press). (1995)
-
[Publications] Matsubara,N.: "Murine polo like kinase 1 gene is expressed in meiotic testicular germ cells and oocytes." Mol.Reprod Dev.(in press). (1995)
-
[Publications] 松居 靖久: "最新・細胞内シグナル伝達ライブラリー(山本雅編)" 羊土社(印刷中), (1995)
-
[Publications] 松居 靖久: "生殖細胞-基礎から最前線まで(岡田益吉、長濱嘉孝編)" 共立出版(印刷中), (1995)