1995 Fiscal Year Annual Research Report
徳川思想史像の総合的構成-「日本化」と「近代化」の統一をめざして
Project/Area Number |
06301006
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
平石 直昭 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20013013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田尻 祐一郎 東海大学, 文学部, 助教授 (80171700)
澤井 啓一 恵泉女学園大学, 人文学部, 助教授 (50154141)
黒住 真 東京大学, 教養学部, 助教授 (00153411)
小島 康敬 国際基督教大学, 教養学部, 準教授 (70101590)
本郷 隆盛 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (00134073)
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Keywords | 徳川思想史 / 近代化と日本化 / 朝幕関係 / 社会成層 / ネットワーク / 政治と宗教・倫理 / 世界像と自国像 |
Research Abstract |
1。従来の徳川思想史像は、朱子学の天人相関論を出発点として、その「近代化」や「日本化」を論ずるというやり方が多かった。これにたいして本研究は、中国思想史上に現われたより多数の天人相関論や天命論を分類・整理し、それらと徳川思想との関連を分析することにより、より多面的・重層的な徳川思想史像を提示した。 2。法制史家によって近世国家は「家職国家」とよばれてきた。これにたいして本研究では、国家論の歴史的な変化を、初期の林羅山から、中期の新井白石、後期の国学、そして幕末の水戸学まで系統的にあとづけることにより、被治者をも体制のなかにとりこむ独特な国家像が、どのようにして形成されたかを明らかにした。 3。近世後期の蘭学などを通して知られるようになった新しい世界像が、従来からの日本=神国論や国学者の日本像、民衆宗教の世界像などにどのような影響を与えたか、そこにみられる逆説的な結合などが指摘された。 4。儒家神道が近世中期以後ひろく浸透していった背景に、朱子学の人体=小天地観のヨミカエという理論的な修正とともに、日本型のイエ社会の形成と、それを再生産してゆくための祖先祭祀の必要という社会的要因があったのではないかという仮説がしめされた。 荻生徂徠の著述の内容分析や地方史料の発掘・分析を通して、江戸における徂徠形成を可能にした学者のネットワークのあり方や、徂徠学が近世中期以後に地方に伝わり、やがて藩政革命に大きな影響を与えた経緯などが明らかにされた。 二年間の共同研究を通じて、徳川思想史の基本史料が蓄積され、分類・整理されてきた。これらについては取捨選択の上、近い将来にテーマ別の史料集として刊行し、ひろく世人の便の供する予定である。
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[Publications] ケイト・W・ナカイ: "徳川朝幕関係の再編-新井白石の幕末王権論をめぐって-" 日本思想史学(日本思想史学会). 27. 29-44 (1995)
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[Publications] 本郷隆盛: "天皇制研究の現在-テーマの設定によせて-" 日本思想史学. 27. 1-5 (1995)
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[Publications] 黒住 真: "キリシタンと日本思想の出会い" 哲学論集(上智大学哲学会). 23. 1-15 (1994)
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[Publications] 黒住 真: "The Nature of early Tokugawa Coufucianism" Journal of Japanese Studies. XX. 337-375 (1994)
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[Publications] 黒住 真: "近世日本思想史における仏教の位置" 日本の仏教(法蔵館). 1. 205-217 (1994)
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[Publications] 黒住 真: "日本儒学の制度と性格" 比較法史研究(比較法史学会). 4. 245-260 (1995)
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[Publications] 黒住 真: "『譯文筌蹄』をめぐって(一)" 人文学科紀要(東大教養学部・国文学漢文学). 102. 51-68 (1995)
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[Publications] 沢井啓一: "徳川日本における世界像の変容-空間と時間の位相転換-" 歴史と理論(歴史と理論研究会). 2. 183-211 (1995)
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[Publications] 沢井啓一: "徂徠集・序類訳注稿(八)(共)" Contexture(埼玉工業大学教養課程). 12. 3-28 (1995)
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[Publications] 沢井啓一: "日本と韓国における儒教の比較研究にむけて" 比較思想研究(比較法史学会). 22(3月刊行予定). (1996)
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[Publications] 平石直昭: "「徳川思想史における天と鬼神」『世界像の形成』所収" 東京大学出版会, 243-286 (1994)
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[Publications] 平石直昭: "「荻生徂徠と先行儒学」『日中文化交流史叢書3思想』所収" 大修館書店, 220-255 (1995)
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[Publications] 平石直昭: "天(一語の字典シリーズ中の一冊)" 三省堂(4月下旬刊行予定), 120 (1996)
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[Publications] ケイト・W・ナカイ: "「武士土着の系譜」『岩波講座日本通史・近世3』所収" 岩波書店, 304-318 (1994)
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[Publications] 本郷隆盛: "「藤田幽谷『正名論の歴史的位置」『近世思想史研究の現在』所収" 思文閣出版, 155-188 (1995)
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[Publications] 小島康敬: "徂徠学と反徂徠(増補版)" ペリカン社, 389 (1994)
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[Publications] 沢井啓一: "「十八世紀日本における<認識論>の探究」『江戸文化の変容』所収" 平凡社, 201-245 (1994)
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[Publications] 田尻祐一郎: "「ある転向-徳川日本と「神道」」『江戸文化の変容』所収" 平凡社, 163-199 (1994)
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[Publications] 田尻祐一郎(英): "太宰春台・服部南郭" 明徳出版社, 288 (1995)
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[Publications] 田尻祐一郎: "「宋明学の受容と変容-孝をめぐって-」『日中文化交流史叢書3思想』所収" 大修館書店, 136-168 (1995)
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[Publications] 小島康敬: "「江戸思想史の中の老荘思想」『日中文化交流史叢書3思想』所収" 大修館書店, 284-319 (1995)
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[Publications] 黒住 真: "「儒学と近世日本社会」『岩波講座日本通史・近世3』所収" 岩波書店, 253-302 (1995)