1996 Fiscal Year Annual Research Report
オピオイド受容体機能の分子的基盤ならびに麻薬耐性の分子機構に関する研究
Project/Area Number |
06404056
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
森 健次郎 京都大学, 医学研究科, 教授 (20025620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 和彦 京都大学, 医学研究科, 講師 (90199224)
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Keywords | オピオイド受容体 / MAPキナーゼ / ホスホリパーゼA2 / 耐性 / サイクリックAMP |
Research Abstract |
クローン化したラットμ、δ、κオピオイド受容体のcDNAをCHO細胞に導入することによりそれぞれの受容体を発現する細胞株を作成した。これらの細胞株を用いて、オピオイド受容体を介する細胞内情報伝達機構を検討した。その結果、従来報告されているアデニル酸シクラーゼ抑制作用の他に、オピオイド受容体の活性化によりMAP (Mitogen-activated protein)キナーゼが活性化されることがわかった。オピオイド受容体によるMAPキナーゼの活性化にはチロシンキナーゼ及びプロテインキナーゼCが関与していることが明らかになった。MAPキナーゼは種々の転写因子の活性を燐酸化により調節することが知られている。従って、我々の得た知見はオピオイド受容体活性化により遺伝子発現が変化し、麻薬に対する耐性や依存性の成立に関与する可能性を示したものである。さらにオピオイド受容体をアゴニストで刺激するとMAPキナーゼの活性化を介してホスホリパーゼA2の活性化が起こり、アラキドン酸が放出されることが明らかになった。この知見はオピオイド受容体の刺激によりアラキドン酸代謝産物であるプロスタグランジンあるいはロイコトリエンが産生され細胞機能が調節される可能性を示唆している。 μ受容体を大量に発現する細胞株を用いて、オピオイド受容体がアゴニストで慢性的に刺激された際に起こる受容体機能の変化を検討した。その結果、アゴニストの刺激により受容体が細胞内に取り込まれリガンド結合活性が低下する(down regulation)ことが示された。一方、アデニル酸シクラーゼの活性は亢進しサイクリックAMP産生量は増加していた(supersensitization)。これらの結果は、生体における麻薬耐性の成立機構を検討する上で有用な知見である。
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[Publications] Fukuda,K.et al.: "Functional caupling of the δ-,μ-and κ-opioid receptors to mitogen-activated propein kinase and arachidonate release in chinese hamsto-amry cells" Journal of Neurochemistry. 67. 1309-1316 (1996)