Research Abstract |
Rasの標的因子の一つであるRGLのRas結合ドメイン(RGL-RBD)について,NMR解析に適した試料を調製した.そして,^<13>C,^<15>Nの安定同位体標識を行ったRGL-RBD単体の立体構造のNMR解析を行い,RGL-RBDがRaf-1のRBD(Raf-1-RBD)と似た二次構造をとっているという予備的な結果を得た.さらに,GMPPNP結合型Rasタンパク質とRGL-RBDとの複合体についても,どちらか一方のタンパク質を^<13>C,^<15>Nの安定同位体標識に加えてパ-シャルな^2H標識を行って,標識をしていない相手と複合体形成を行わせ,NMR解析を行っている. 最近,Raf-1を活性化できないRap1AとRaf-1-RBDとの複合体,および,Rap1AのRas型変異体Rap1A(E30D/K31E)とRaf-1-RBDとの複合体の結晶構造から,RasのE31とRaf-1のK84とが引き合うことがRaf-1活性化に重要であるという仮説が提示された.しかし,本研究でRasの31番目のアミノ酸残基に多種類の変異を導入し,それら変異体について解析を行った結果,31番目のアミノ酸残基とRaf-1のK84とが引き合うことはRaf-1活性化に必須ではなく,それらの残基が反発することがRaf-1-RBDとの相互作用に悪影響を及ぼし,Raf-1活性化能を低下させることがわかった.さらに,このことは,Ras(D30E/E31K)変異体とRaf-1-RBDとの複合体について行ったNMR解析からも支持された. また,多数のRas変異体について,多種類のRasの標的因子(GAPs,Raf-1,B-Raf,RalGDS,PI3K,Byr2,Scd1/Ral1など)との相互作用を解析することで,各々の標的因子が,いずれもRasのエフェクター領域を認識するが,互いに少しづつ異なった認識をすることを明らかにした.
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