1995 Fiscal Year Annual Research Report
野生動物の重金属蓄積はどのようにして決まるか-その比較生物学を中心に-
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06405006
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Research Institution | EHIME UNIVERSITY |
Principal Investigator |
立川 涼 愛媛大学, 農学部, 教授 (50036290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 公栄 愛媛大学, 農学部, 助教授 (50116927)
田辺 信介 愛媛大学, 農学部, 助教授 (60116952)
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Keywords | 重金属 / 野生動物 / 水銀 / カドミウム / 有機スズ化合物 / 海棲哺乳動物 / 鳥類 |
Research Abstract |
本研究の目的は、哺乳類、鳥類などの高等動物を供試し、重金属の組織・部位別分布、年齢変動や性差、生物過程(換羽、換毛、渡り、出産、授乳)にともなう蓄積変動を明らかにし、比較生物学的な視点でその体内動態と蓄積を決める要因を理解することにある。本年度は、水銀とスズの蓄積についてとくに集中的な研究を展開し、以下のような成果を得た。 1)鳥類、とくにアホウドリなど外洋性の鳥類の中には水銀を異常なほどの高濃度で蓄積しているものがあり、これらの鳥種は換羽の頻度が緩慢なことに加え、有機水銀の無機化機構が乏しいものと推察された。しかし、水銀の毒性影響は顕在化しておらず、水銀濃度に相応したセレンの蓄積が水銀耐性に関与しているものと考えられた。 2)淡水棲の鰭脚類バイカルアザラシについて水銀濃度を測定したところ、海棲の種に比べ明らかな低濃度が観察された。類似の低濃度はカドミウムでも認められ、餌生物の魚介類を分析したところ、やはり海産のものに比べると低濃度であった。こうした低濃度蓄積は、カスピ海アザラシや黒海のネズミイルカでも認められ、陸上の閉鎖性水域に棲息する高等動物は、沿岸や外洋性の動物と異なり水銀やカドミウムの暴露量が少ないものと思われる。 3)海棲哺乳動物や海鳥から有機スズ化合物を検出し、地球規模での高等動物汚染があることを世界ではじめて実証した。有機スズ化合物は、主として肝臓に蓄積しているが鳥類では腎臓の濃度が高く、生物種により体内分布に違いのあることがわかった。とくに、鰭脚類や鳥類では毛や羽に相当濃度の残留が認められ、換毛や換羽により排泄されることが示唆された。したがって鰭脚類のトドでは、有機スズ化合物の年齢蓄積傾向歯認められなかった。また、有機スズ化合物の濃度には雌雄差がみられないことから、出産や授乳による母子間移行量は小さいものと推察された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Kannan,K.,Tanabe,S.and Tatsukawa, R.: "Concentrations of heavy metals,organochlorines and organotins in horseshoe crab from Japanese coastal waters" Archives of Environmental Contamination and Toxicology. 28. 40-47 (1995)
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[Publications] Kannan,K.,Tanabe,S.and Tatsukawa,R.: "Butyltins in muscle and liver of fish collected from certain Asian and Oceanian countries" Environmental Pollution. 90. 279-290 (1995)
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[Publications] Iwata,H.,Tanabe,S.and Tatsukawa,R.: "High accumulation of toxic butyltins in marine mammals from Japanese coastal waters" Environmental Science and Technology. 29. 2959-2962 (1995)
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[Publications] Noda,K.,Ichihashi,H.and Tatsukawa,R.: "Distribution of heavy metals in muscle,liver and kidney of northern fur seal caught off Sanriku,Japan and Pribilof,Alaska" Environmental Pollution. 90. 51-59 (1995)
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[Publications] Kim,E.,Tanabe,S.,and Tatsukawa,R.: "Metal accumulation in tissues of seabirds from Chaun,northeast Siberia,Russia." Environmental Pollution. (in press). (1996)
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[Publications] Guruge,K.S.,Tanabe,S.and Tatsukawa,R.: "Organ specific distribution,biomagnification,and elimination of butyltin compound residues in common cormorants from the lake.." Archives of Environmental Contamination and Toxicology. (in press). (1996)