1996 Fiscal Year Annual Research Report
中国古代中世における女性史関係資料についての歴史的思想史的研究
Project/Area Number |
06451003
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
下見 隆雄 広島大学, 文学部, 教授 (30071822)
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Keywords | 儒教社会と女性 / 女性学 / 列女伝 / 儒教と孝 / 家族制 / 中国女性史 / 孝と母性 / 孝子伝記 |
Research Abstract |
本研究は、中国古代中世、特に、漢〜魏晋時期における女性史関係資料への、歴史的思想史的な観点に立脚して詳細なる分析検討を加え、かつこれらを綜合的に分類整理して、儒教家族制の中での女性の社会的位置づけないし役割の展開・推移について考察し、従来とは全く異なった角度から、中国女性史を再検討することを目的として推進された。本年の主たる研究目標は、『華陽国志』列女伝記資料研究を中心とし、その他の関連資料へも必要に応じて研究調査を試みることにあった。 本年度の成果は、(1)『華陽国志』中の列女伝記資料それぞれを、前年度に続いて解読し、関連資料を綿密に調査し、さらに女性史資料としての諸特質の検討を継続した。(2)儒教社会における女性の位置や役割は、孝の思想を明確にすることを要する。このため、特色有る孝子伝記を取り上げて、これを従来とは異なる観点から詳細に分析し、孝とはなにかについての一つの新鮮な結論を導いた。(3)孝の問題に関連して、孝を子のこころに養成する仕組みに注目し、歴代の書籍に見える母と子の関係に言及する資料を整理分析して、孝を教導する母親の役割について明確にし、中国思想研究にも一つの新たな可能性を示した。なお、公表は本年度内ではないが、本研究による成果に次のようなものがある。(1)論文一篇を学術雑誌に提出、発表も間近である。(2)本科研費を得て推進した研究成果の一部をまとめて一書とし、本年刊行する予定である(原稿完成)。 反省点。当初、『晋書』列女伝・后妃伝や『世説新語』賢媛篇などに見える女性史資料にも、詳細な分析研究を加える予定であったが、これに至り得なかった。また、『華陽国志』の資料伝記資料への研究も完成し得ていない。この未完成部分への研究は、今後継続し、中国女性史研究のための有意義で確かな資料作りに努めたい。
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[Publications] 下見隆雄: "『華陽国志』列女伝記研究 続稿" 東洋古典学研究. 第一集. 24-44 (1996)
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[Publications] 下見隆雄: "老來子孝行説話における孝の真意" 東方学. 92輯. 44-58 (1996)
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[Publications] 下見隆雄: "孝を育む母性-中国女性史の視座-" 東洋古典学研究. 第二集. 58-77 (1996)
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[Publications] 下見隆雄: "孝から忠への展開について" 東洋古典学研究. 第三集. 1-21 (1997)
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[Publications] 下見隆雄: "『古田敬-教授頒寿記念中国学論集』 孝の本質を点検する-孝子説話を中心に-" 汲古書院, 16 (1997)
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[Publications] 下見隆雄: "『孝と母性のシステム』-中国女性史の視座-" 研文出版, 300 (1997)