Research Abstract |
本研究は,比較的隔離された山村ならびに漁村において,時代としてはおよそ,昭和初期の近過去から現在まで,山村や離島の人々の生活を支えてきた生業の変還史を個人の歴史の追跡の中から描き出し,また,生業と社会経済情勢の近代化の流れの中で社会原理としての平等性が果たしてきた機能を検証しようとするものである。今年度は基礎資料収集のための現地調査を主体とした研究をおこなった。山村に関しては,主たる調査地として,兵庫県の中央部に位置する中国山地の小村,兵庫県佐用群佐用町海内を選んで,1994年6月,11月,1995年2月の3回にわたって現地調査をおこなった。また,漁村としては,沖縄県島尻群知念村の一離島である久高島において1995年3月に現地調査をおこなった。 海内では,昭和初期から現代まで,コンニャク栽培と炭焼きを中心とした生業の移り変わりと村人の生活の変化,価値観,社会組織の変化などを,観察と聞き込みで調べ,また冬期の山野におけるシカやイノシシの猟などの,副次的ではあるが当の個人にとっては大変重要な生業活動(マイナ-サブシステンス)についてもデータの収集をおこなった。このような多彩な生業と生態系のバランスを維持するためのよりどころとしての平等性のあり方が追求された。 久高島では,小型漁船による沿岸漁業ならびに自家消費のための多彩な作物を主体とした畑作などの主たる生業についての観察と聞き込みをおこない,また沿岸採集やエラブウナギ採集活動などの諸活動についての調査をおこなった。久高島では,離島という条件のもとで共有制と地割りを基本とした耕地制度,階層的社会組織,神事組織などにきわめて特徴的なものが多く見られるが,それらの様々な組織と制度を横断して,組織原理としての平等性がつよく機能してきたことが分かってきた。今後,このようなトータルな生活原理としての平等性を追求してゆく必要がある。
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