1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06451066
|
Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
楠瀬 正明 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40033518)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松重 充浩 広島県立女子大学, 国際文化学部, 助教授 (00275380)
水羽 信男 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50229712)
曽田 三郎 広島大学, 文学部, 助教授 (40106779)
|
Keywords | 政治統合 / 近代化 / 国民国家の形成 / 国民の創出 / 国会 / 地域主義 / 一党独裁体制 / 都市中間層 |
Research Abstract |
本研究計画の成果をまとめるにあたり、代表的な人物に焦点をあてて近代中国の国民国家形成をめぐる諸問題を考察することとし、清末時期については、曽田三郎が楊度わ、楠瀬正明が梁啓超を、北京政府時期については、松重充浩が王永江を、国民政府時期については水羽信男が施復亮を取り上げた。本研究計画の成果を要約すれば、以下の如くである。 近代中国の基本的な課題は列強から植民地化されるという民族的危機をいかにして打開するか、そのためにいかにして国民国家を形成するかにあった。この課題に対して、清末の20世紀初期において、曽田三郎は日本留学生の中で代表的人物であった楊度が憲法編査館に入って清朝の立憲化政策に参画し、合議的集権的行政府を樹立することが必須であると認識し、その実現のために奮闘したことを詳論した。これに対して楠瀬正明は日本に亡命していた梁啓超が国会の速開が救国の課題であると認識し、国会組織論を提案し、国会速開運動において理論的指導を行ったことを論じた。辛亥革命による中華民国の形成は軍閥の割拠を招き、1920年代に国民革命が現実化される中で、あらためて国民国家の形成が課題となる。このいわゆる北京政府時期について、松重充浩は、東北地域の民政担当の中心人物であった奉天省長の王永江をとりあげ、彼が構想した東北地域の財政・実業・教育などの諸政策を検討し、それが東北地域の発展をめざすものであったが、中国全体の発展には直接つながらないという問題点があったと指摘した。抗日戦争の勝利後、国民国家の樹立が現実化するが、水羽信男は国民党とも共産党とも異なる「中間路線論」を提唱した施復亮をとりあげ、彼が都市中間層を基盤とする立場から一党独裁体制を否定する国民国家構想を提起したこと、そしてその実現可能性と限界性について論じた。
|
Research Products
(2 results)