1995 Fiscal Year Annual Research Report
旧石器時代の石材獲得システムの研究-新潟県北部地域を中心として-
Project/Area Number |
06451072
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
阿部 朝衛 帝京大学, 文学部, 助教授 (20175178)
|
Keywords | 石材獲得システム / 旧石器時代 / 縄文時代 / 石材環境 / 遠隔地 / 近隣地 / 頁石 / 安山岩 |
Research Abstract |
本年度は、河原での原石調査の補足、旧石器時代・縄文時代の石器材料の継続調査を行い、以下の調査結果が得られた。 1 信濃川中流域、最上川中・上流域のん調査を補足的に行うことによって、前者では安山岩、後者では頁岩が主体的に採集された。新潟県北部の石材環境は周辺地域と明らかに異なることが再認識された。 2 資料的に少ない細石刃文化期の遺跡を調査することによって、十分な資料を得ることができた。そして、主に近隣地の石材(頁岩)を用いている可能性が確認され、遠隔地の石材(頁岩)は少量と推定された。石刃石器群と対照的であることがわかった。 3 旧石器時代と縄文時代の石材使用方法は著しく異なることが再認識された。前者の石材は相対的に種類が限定され、遠隔地のものである。ただし、いわゆる前期旧石器時代の石材の用い方は縄文時代のそれに類似すると想定された。 4 しかし、旧石器時代の各段階でも石材の用い方に変化があると理解された。特に、遠隔地と近隣地の石材の比率に差異が認められ、石材獲得システムの変化が観察された。その背景には、石器の数量・形状・石器製作技術が関与していると推定された。 5 遺跡への石器または原石の持ち込みに関して、遠隔地の石材の場合は石刃・石器または石核の状態で搬入され、近隣地の場合は原石またはそれに近い状態で搬入されていたと推定された。これは、4と同様、石材獲得システムを復元する上で重要な事実である。 石材獲得システムは、石器の種類・数量、石器製作技術、そして移動の方法、遺跡における居住期間・時期、活動内容などが関与しているとみられ、今回は前2者の関与を明らかにした。今後は、各要素の関係性をさらに追究してゆくつもりである。
|