1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06452044
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚田 捷 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (90011650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 功佳 東京大学, 大学院理学系研究科, 助手 (80221969)
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Keywords | 電子状態計算法 / 探針による原子過程 / 非平衡定常系 |
Research Abstract |
探針による原子過程を記述し予言するために必要な第一原理的な電子状態計算法の開発と整備を行った。これはリカ-ジョン・伝達行列法とよばれ、強い電界や電流下で非平衡定常系の電子状態を局所密度汎関数法のレベルで計算することを可能とする。表面の数オングス-トロム程度の近傍で、探針が誘導する局所的な原子過程と化学過程の理論的な研究に有効である。今年度はアルカリ原子とアルミニューム原子の電極・探針系2電極モデルを対象に選んで、計算手法の立ちあげ、プログラム開発、準備的な計算を行った。得られた主な結果は次のようなものである。両電極間の距離を接近させるとある距離から探針先端原子の近傍でトンネル障壁に穴があき、そこを通して電子が弾道的に電極間を流れるようになる。探針-表面間の距離の減少とともにこの穴は大きく広がり、両者の間で電子の波動関数の混成が生じ始める。この距離はアルカリ系では10A程度であるがアルミニューム系ではもっと小さい。この距離を境として、空隙幅の減少に対する電流密度の指数関数的な増加が逓減し飽和の傾向を示す。これはマイクロコンタクト形成の微視的な描像を明らかにしたものである。探針と表面間に強いバイアス電圧を加えると両者の間で原子が移動するが、その機構は両者の距離により異なる特徴を示す。すなわち距離が小さいときは近接効果が非常に大きく、印加された電圧による電子密度分布の変化し局在した力を表面原子におよぼす。例えば探針を負電位にすると、頂点附近から電子雲が押し出され表面原子に橋懸けされ、その表面原子を引き抜く力を生じる。一方、両電極間の距離が大きいときには、正電位表面側の突出原子は正にイオン化し、静電的な効果による電界蒸発がおこる。興味深い事実は負電位側ではイオン化ではなく、原子の強い分極が生じることである。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 広瀬賢二、塚田 捷: "First-Principles Theory of Atom Extraction by Scanning Tunneling Microscopy" Physical Review Letters. 73. 150-153 (1994)
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[Publications] 広瀬賢二、塚田 捷: "First-principles Theory of Electronic States under Strong Field and Currents and Its Application to Scanning Tunneling Miroscopy" Japan Journal of Applied Physics. 33. 3662-3666 (1994)
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[Publications] 清水達雄、塚田 捷: "Theory of Scanning Tunneling Microscopy of Oxygen Adsorbed Ag(110) and Cu(110) Surfaces" Journal of Vaccuum Science and Technology. B12. 2200-2204 (1994)
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[Publications] 小林功佳、塚田 捷: "Electronic Structure of Monolayer Graphite on TiC(111) Surface" Physical Review B. 49. 7660-7669 (1994)
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[Publications] 広瀬賢二、塚田 捷: "A Microscopic Theory of Scanning Tunneling Microscope for Finite Electric Field and Current" Journal of Vacuum Science and Technology. B12. 2164-2166 (1994)
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[Publications] 山内 純、塚田 捷: "Structure and Electronic States of the Si(001)2×1/C Surface by First-Principles MD.Calculations" Applied Surface Science. 75. 58-63 (1994)
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[Publications] 小間篤、八木克道、塚田捷、青野正和: "表面科学入門" 丸善出版, 249 (1994)
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[Publications] 西川治、塚田捷、他: "走査型トンネル顕微鏡/原子間力顕微鏡利用技術集成" (ナノ表面研究会)ティー・アイ・シ-, 401 (1994)