1994 Fiscal Year Annual Research Report
共役ポリマー:ポリジアセチレンにおける光誘起相転移のダイナミクス
Project/Area Number |
06452045
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
腰原 伸也 東京工業大学, 理学部, 助教授 (10192056)
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Keywords | 光誘起相転移 / 共役ポリマー / 単結晶 / 相転移ダイナミクス / 時間分解分光法 / ポリジアセチレン / 固相重合法 / ドメイン壁 |
Research Abstract |
平成6年度には、PDAにおける「光誘起相転移」現象に関して以下の様な成果が得られた。 (1)アルキル-ウレタン基を持つ各種PDAのモノマー単結晶を再結晶法によって作製し、γ線・紫外線照射による固相重合法によって良質なポリマー単結晶を得ることが出来た。(2)得られた単結晶の一部について、反射・ラマンスペクトル及びその温度変化の測定を行い、重合γ線量との関連を検討しより優れた温度誘起相転移特性を示す単結晶を得るための条件を明らかにすることが出来た。そして現在、その結果を新試料合成過程にフィードバックしつつある。(3)学内・外の共同利用施設のパルスレーザーを用いたナノ秒時間分解反射(吸収)スペクトルの測定によって、光誘起相転移の初期過程(ドメイン壁形成過程)が50ナノ秒以下の非常に短時間で起きていることが明かとなった。(4)光励起によって発生した揺らぎ(不安定相ドメイン)が、元の安定相に緩和して行く様子を時間分解分光法で刻一刻と追跡することに成功した。 以上のように、研究はおおむね順調に進行中であり、当初の計画通り平成7年度において終了可能な予定である。また、得られた成果は相転移一般の研究にも広く影響をあたえつつある。ただし本年度の研究結果から、光誘起相転移の今後の研究に関して以下の2つの問題点があることも明かとなった。(1)「光誘起相転移」現象の初期過程は非常に高速(50ナノ秒以下)であると予測され、時間分解能をコピ・フェムト秒まで高めた研究を展開して行く必要がある。(2)PDA単結晶における相転移のより詳細なメカニズムを明らかにするために、高分解能X線回折による結晶構造解析が可能な試料を得る必要がある。
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[Publications] Shin-ya KOSHIHARA,et.al.: "Dynamics of Photo-induced Phase-transition in Low Dimensional Organic Crystals and the Role of Photo-carriers" Mol.Cryst.and Liq.Cryst.252. 283-292 (1994)
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[Publications] Shin-ya KOSHIHARA,et.al.: "Nanosecond and Picosecond Dynamics of Photo-induced Phasetransition in Low Dimensional Organic Crystals" Syn.Metals. (印刷中).