1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06452046
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫛田 孝司 大阪大学, 理学部, 教授 (00013516)
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Keywords | 単分子分光 / テリレン / two-level systems / ミオグロビン |
Research Abstract |
我々は、ポリマーはガラスにドープした色素分子ならびに蛋白質中の発色団を対象に、レーザーの単色光を照射してサイト選択分光を行うことにより多くの成果を挙げてきた。これは、単一サイトにある分子を選び出してそのスペクトルを調べるものであるが、なお多くの分子の平均を見ているにすぎない。これに対して、真に少数の分子のみのスペクトルを調べればより詳しい情報が得られ、さらに単一の分子のスペクトルを測定することができれば、これは極限的な分光であり、分子のまわりに関する決定的な情報がもたらされると考えられる。そこで、ヘキサデカン中のテリレンについて、ゲスト分子の濃度を十分低くし、不純物を極力へらし、またレーザー光を照射する領域のサイズを十分小さくするとともに、レーザー発振線のスペクトル幅を1MHzと狭くし、かつスムーズに走引するようにして、少数分子のスペクトル測定を試みた。その結果、2〜5Kの温度領域で単一分子までスペクトル測定が可能になった。そこで、試料に圧力を加えながら多くの単一分子のスペクトルについてエネルギー位置の圧力効果を調べ、真空におけるテリレンの吸収波長を求めた。また単一分子のスペクトル幅は、温度変化に対して線形なふるまいをするもののほか、非線形なふるまいをするものもあることを見いだし、これをtwo-level systems (TLS)の効果で説明した。一方、ミオグロビンの吸収スペクトルに十分低温でホールをあけ、その形状の温度依存性を解析することにより、ミオグロビンの内部と外側にあるTLSの効果を分離できることに目をつけ、詳細な実験と解析を行って、4〜70Kの温度領域で二重井戸ポテンシャル間を遷移するTLSに対応する分子基は、各蛋白質中に1個しかないことを明らかにした。またこのTLSとミオグロビン中の色素との結合強度も求めた。
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[Publications] A.Kurita,Y.Shibata and T.Kushida: "Two-Level Systems in Myoglobin Probed by Non-Lorentzian Hole Broadening in a Temperature-Cycling Experiment" Physical Review Letters. 74. 4349-4352 (1995)
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[Publications] Y.Shibata,A.Kurita and T.Kushida: "Structural Relaxations in H_2-Substituted Myoglolin Observed by Temperature-Cycling Hole-Burning" Journal of Chemical Physics. (印刷中).
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[Publications] 岩本敏志,栗田厚,櫛田孝司: "電子相関系の光量子物性" 光物性研究会, 290(47〜50) (1994)