1995 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導ネットワークにおける磁束量子の配列秩序とフラストレーション
Project/Area Number |
06452051
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 俊人 東京大学, 先端科学技術研究センター, 講師 (00192526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永宗 靖 工業技術院, 電子技術総合研究所, 主任研究官 (20218027)
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Keywords | 超伝導ネットワーク / 磁束量子 |
Research Abstract |
本研究は、磁場中の超伝導細線網(超伝導ネットワーク)における各ループへの磁束量子の配置状況を実験的に調べることにより、系のフラストレートした磁場中超伝導状態を解明しようとするものである。昨年度はアルミニウム2次元超伝導ネットワーク試料の作製技術の確立および交流磁場を用いた簡易型測定装置の構築を行なった。この簡易型装置では感度が不十分であったので、本年度はまず超伝導転移温度の磁場依存性を高感度で測定するための専用装置の試作を行なった。これは試料自体を温度制御用の超高感度の抵抗温度計として用いることで、試料温度を幅10mK程度の超伝導転移の中点に厳密に調節する装置であり、ふらつき30μK以下の温度制御安定性を達成できた。磁場に対する転移温度の磁束量子化振動の典型的振幅は数mK程度であるので、試作装置は振動に重畳して現れる微細な磁束配列構造を観測するのに必要な安定度を有している。この装置を用いて、三角格子および類似格子の超伝導細線ネットワークについて実験を行なった。三角格子はループ2つで1つの単位胞を形成するので、ループあたり1/2の磁束占有率でも転移温度が上昇する。一般に他の有理数占有率でも磁束量子の周期的秩序配列が可能になり超伝導転移温度が微妙に上昇するので、転移温度の振動には複雑なフラクタル的微細構造が重畳するはずである。実験の結果幾つかの微細構造を観測できた。理論とのフィッティングにより試料の超伝導コヒーレンス長は0.数μmと見積もられた。また境界の効果を調べる目的で大きさを変えた正方格子の測定を行なった。サイズを大きくして無限系に近づくにつれ転移温度の振動が系統的に複雑化していく様子を実験的に観測した。なお磁束量子の配列パターンを実空間で直接観測するために、磁束量子測定用の微小ホール素子を超伝導ネットワーク上に配置した試料の作製も行なったが有意な実験を行なうには現在至っていない。
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