1994 Fiscal Year Annual Research Report
超高エネルギー分解能中性子分光による強く乱れた系の低エネルギー磁気励起の研究
Project/Area Number |
06452063
|
Research Institution | National Laboratory for High Energy Physics |
Principal Investigator |
池田 宏信 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 教授 (90013523)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 晋一 高エネルギー物理学研究所, ブースター利用施設, 助手 (00221771)
|
Keywords | 中性子散乱 / 冷中性子 / 高エネルギー分解能 / パーコレーション / フラクタル / 異常拡散 |
Research Abstract |
物性物理学の研究において、相転移およびダイナミクスの研究は最も魅力ある分野のひとつである。これまで中性子散乱がこの分野の研究の発展に大きな寄与を与えてきたが、一方では、装置上の限界もあり、低エネルギー領域での磁気励起、あるいは、永い緩和時間をもつ系の揺らぎの研究は、重要でありながら、進展が遅れている。以上の背景のもとに、パルス冷中性子を用いた高エネルギー分解能中性子分光器を開発し、高磁場(7.5テスラ)、極低温(0.3K)下で,しかもエネルギー分解能10μeVでの実験が可能とした。まず、磁性原子を不純物として含んだ系における磁気モノマー、また、ダイマーのゼーマン分裂を明瞭にかつ短時間(数時間)のうちに観測することに成功した。このような実験は従来電子スピン共鳴(ESR)でのみ研究されてきたが、上の事実は、今や中性子散乱法が高エネルギー分解能をもつことによって、ESRの領域までカバー出来得ることを直接示したものと言える。またさらに、英国ラザフォード・アップルトン研究所と協力して、2次元正方格子磁性体のパーコレーション濃度近傍での異常拡散現象の観測に成功した。2次元正方格子磁性体のパーコレーション濃度近傍での磁性原子の結合形態は、自己相似性を有し、かつ、フラクタル次元1.896をもつ。このような格子上を拡散するスピンの運動は一様系(純粋系)に比べて著しく遅くなり、かつ、通常の拡散則(<r^2(t)>∝t)に従わずフラクタル系特有の新しい法則(異常拡散)に従うものと考えられていたが、これまで観測に成功していなかった。エネルギー分解能4μeVをもつ中性子分光器による自己相関関数の高分解能測定を行い、フラクタル系特有の新しい法則(異常拡散)から帰結されるE^<-0.31>に従うエネルギースペクトルを自己相関関数にはじめて見いだした。
|
Research Products
(10 results)
-
[Publications] 矢崎昭: "Neutron paramagnetic scattering from antiferromagnetic RbMnF3 and Mn3Pt using time of flight technique" J.Phys.soc.Jpn.63. 748-754 (1994)
-
[Publications] 池田宏信: "Spin daynamics in the two-dimensional percolating Ising antiferromagnet" Physica A. 204. 328-340 (1994)
-
[Publications] 岩佐和晃: "Pressure induced long-period magnetic structure in layered antiferromagnets Rb2MnF4 and Cs2MnF4" J.Phys.soc.Jpn.63. 1900-1907 (1994)
-
[Publications] 岩佐和晃: "High-resolution inelastic neutron scattering from RbMncMg1-cF3(c=0.10 and 0.15) under magnetic fields" J.Phys.soc.Jpn.63. 2862-2865 (1994)
-
[Publications] 池田宏信: "Fracton excitations in a diluted Heisenberg antiferromagnet near the percolation threshold:RbMn0.39Mg0.61F3" J.Phys.:Condens.Matter. 6. 10543-10549 (1994)
-
[Publications] 伊藤晋一: "Spin dynamics in an Ising-like quantum spin chain with nonmagnetic impurities" J.Phys.Soc.Jpn.64(印刷中). (1995)
-
[Publications] 池田宏信: "Spin correlations in percolating networks with fractal geometry" Physica B. (印刷中). (1995)
-
[Publications] 岩佐和晃: "Localized magnons in a two-dimensional mixed antiferromagnet" Phisica B. (印刷中). (1995)
-
[Publications] 外館良衛: "Spin wave excitations in frustrated one-dimensional antiferromagnet KCu1-cMncF3" Physica B. (印刷中). (1995)
-
[Publications] 村上洋一: "Neutron diffraction study of oxygen monolayers" Physica B. (印刷中). (1995)