1994 Fiscal Year Annual Research Report
選択的に置換された同位元素のNMRによる有機伝導体の低温電子物性の研究
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06452064
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
鹿野田 一司 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (20194946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河本 充司 お茶の水女子大学, 理学部, 助手 (60251691)
中澤 康浩 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (60222163)
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Keywords | NMR / 同位元素置換 / 有機伝導体 / 有機超伝導体 / 金属-絶縁体転移 / 極低温物性 / 反強磁性転移 |
Research Abstract |
BEDT-TTF分子の中でスピン密度の大きい中心2重結合炭素位置を^<13>Cに置換した分子を大量に作成することに成功した。それを用いて、まずκ型の3つの塩、Cu[N(CN)_2]Cl塩(絶縁体)、Cu[N(CN)_2]Br塩(超伝導体)、Cu(NCS)_2塩(超伝導体)を電解法で結晶成長させ、^<13>C-NMR実験を行なった。絶縁相Cu[N(CN)_2]Cl塩は、27Kに鋭い核スピン-格子緩和率のピークと同時にNMR線幅の広がり示すことから、反強磁性転移を起こすことがわかった。それより高温側では、反強磁性スピン揺らぎを物語る緩和率の温度依存性が観測された。室温から60Kまでは、他の2つの超伝導体も同じ様な反強磁性揺らぎの成長を示すが、40〜60K以下でこれが押さえられ、Cu[N(CN)_2]Cl塩での磁気転移の代わりに超伝導転移を示す。緩和率の値はシフトから見積もられたコリンガ則の値より一桁大きく、反強磁性的スピンの揺らぎの存在を示している。つまり、これら3つの塩では、強い電子相関の効果が顕になっていることがわかった。Cu[N(CN)_2]Cl塩については、単結晶を用いた^1H-NMRと磁化測定より、低温秩序相の磁気構造を決定した。それによれば、commensurateでモーメントが(40〜100)%_<μB>と大きく、TMTSF系等1次元系のSDWとはだいぶ様相が違うことが明らかとなった。 DCNQI分子末端のCNを^<13>Cと^<15>Nで置換することに成功した。この分子を用いて(DME-DCNQI)_2Cuを作成し、置換サイトで^<13>Cと^<15>N NMR実験を行なった。ナイトシフトとスピン-格子緩和率の測定から、この系で起こる金属-絶縁体転移は強い一次転移で、転移近傍では電子の有効質量の増大はないことがわかった。金属状態では、スピン磁化率の異なる温度依存性を示す異なるバンドが存在することが実証された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 河本 充司: "^<13>C NMR Study of Layered Organic Superconductors based on BEDT-TTF molecules,where BEDT-TTF is bis(ethylenedition)tetrathiafulvalene" Physical Review Letters. (発表予定). (1995)
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[Publications] 宮川 和也: "^<13>C-NMR Study on k-(BEDT-TTF)_2X" Synthetic Metals. (発表予定).
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[Publications] 鹿野田 一司: "^<13>C-NMR Study on α-(BEDT-TTF)_2MHg(SCN)_4" Synthetic Metals. (発表予定).
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[Publications] 河本 充司: "Systematic Study of DCNQI-Cu Salts by NMR at Selective Nuclear Sites." Synthetic Metals. (発表予定).