1994 Fiscal Year Annual Research Report
結晶表面における高速中性粒子のエネルギー損失機構の研究
Project/Area Number |
06452070
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
万波 通彦 京都大学, 工学部, 教授 (60025294)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 康文 京都大学, 工学部, 助手 (00196784)
木村 健二 京都大学, 工学部, 助教授 (50127073)
|
Keywords | 高速中性粒子 / 飛行時間法 / 表面散乱 / エネルギー損失 |
Research Abstract |
30keVイオン加速器とれに接続した超高真空散乱槽を改良して、飛行時間法(TOF)による中性粒子のエネルギー測定装置の設計・製作を行った。製作した装置は、偏向器にパルス状の電圧を印加して、イオンビームを数nsec程度の幅のパルス状ビームとする。これを単結晶表面に小角で入射させて、散乱イオンをマイクロチャンネルプレート(MCP)で検出し、飛行時間を測定してイオンのエネルギーを求める。散乱後のイオンを磁場により荷電状態ごとに分離して測定することにより、イオンのみならず中性粒子のエネルギースペクトルの測定が可能である。散乱槽の下流に設置したドリフト部、検出器部は磁気軸受分子ターボポンプで排気し、残留ガスとの衝突による荷電変換の確率をできる限り小さくするように配慮した。 30keVのプロトンを用いてこの装置で得られた飛行時間スペクトルは、4.5nsの時間分解能を有していることが分かった。この時間分解能は、エネルギー分解能に換算すると0.7%となる。この装置を用いて30keVプロトンをSnTe(001)表面に1°以下の角度で入射させ、散乱したプロトンと中性水素原子のエネルギースペクトルを測定し、表面小角散乱粒子のエネルギー損失を求めた。得られたエネルギー損失は、プロトンと中性水素原子でほとんど変わらなかった。この結果は、表面近傍でプロトンはほとんど中性水素原子になっていることを示唆している。 これらの実験結果を解析する上での基礎となる、表面小角散乱イオンの軌道計算を、スーパーワークステーションにより行うためのプログラムを開発した。 これらの研究と平行して、表面における高速HeH^+分子イオンの解離過程の研究を行い、表面電子との衝突によるHeH^+イオンの解離断面積を評価した。また、表面における高速Liイオンのエネルギー損失の測定を行った。さらに、表面におけるプロトンのエネルギー損失の際に生じるエネルギーロスストラグリングの研究を行い、その起源が主に1電子衝突によることを示した。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] Y.Susuki: "Dissociative scattering of fast HeH^+ ions at glancing-angle incidence on a crystal surface" Physical Review A. 51. 528-534 (1995)
-
[Publications] M.Mannami: "Charge-state dependence of energy losses of 3.2MeV Liions specularly reflected from surface of single crystal" Nuclear Instruments and Methods. (印刷中).
-
[Publications] Kenji Kimura: "Energy loss straggling of 0.5-MeV protons specularly reflected from a SnTe(001)surface" Nuclear Instruments and Methods. (印刷中).