1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06452091
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
磯崎 行雄 東京工業大学, 理学部, 助教授 (90144914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井田 茂 東京工業大学, 理学部, 助教授 (60211736)
丸山 茂徳 東京工業大学, 理学部, 教授 (50111737)
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Keywords | 層状チャート / 遠洋深海堆積物 / 超大陸パンゲア / プランクトン / 酸化・還元 / 光合成 / 海水循環 / スーパープリューム |
Research Abstract |
本研究では、2億5千万年前の古生代・中生代(P/T)境界でおきた、顕生代で最大規模の生物大量絶滅の原因を、古生物学的および地球化学的手法を用いて解明することであった。とくに、世界で初めての付加体中から発見されたチャート相P/T境界層について、丹念な岩相記載、年代決定、および化学分析が試みられた。その結果、あらたに以下の事柄が解明された。1)境界前後の約2千万年間には黄鉄鉱を含む暗色層のみが堆積し、その前後の時期に赤色層のみが長時間堆積していたことと、明瞭なコントラストを呈する。この事実は、当時の遠洋深海の海水中の溶存酸素量が少なく、堆積物が還元的な環境で沈積したことを示す。2)境界層には、遠洋深海堆積物としては異様に厚い2-5mの黒色有機炭素質泥岩がはさまれ、境界前後のある時期に極めて強い還元環境が遠洋深海底に出現したことを示唆する。3)遠洋域で、大量に発生しつづけていた動物プランクトンである放散虫は、境界前後の約1千万年間は地層中に欠如している。このことは、当時の大量絶滅が大陸上およびその周辺のみではなく、汎世界的におきたことを意味する。4)境界をはさむ地層の化学分析(主要元素、微量元素、希土類元素)の結果は、境界前後に、異常な規模の火山活動がおきたこと、またそれが原因で地球表層部での光合成が極端に抑制されたことを暗示している。これらのことから、生物大量絶滅や超酸素欠乏海洋などの古生代・中生代境界において汎世界規模でおきた特異な現象の根本原因は、地球内部で間欠的におきるスーパープリュームの活動にあったことが推定される。これらの新しい成果は、別項に示す論文として公表された。
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[Publications] 磯崎 行雄: "超酸素欠乏事件:史上最大の生物大量絶滅のシナリオ" 科学. 64. 135-144 (1994)
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[Publications] 磯崎 行雄: "大量絶滅のテクトニクス" 月刊地球. 号外no.10. 92-96 (1994)
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[Publications] Isozaki,Y.& Blake,M.C.: "Biostratigraphic constraints on formation and timing of accretion in a subduction complex:An example from the Franciscan complex in northern California." Journal of Geology. 102. 283-296 (1994)
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[Publications] 中尾 京子・磯崎 行雄: "美濃帯犬山地域の遠洋性チャート中に記録されたP/T境界深海anoxiaからの回復過程" 地質学雑誌. 100. 505-508 (1994)
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[Publications] Isozaki,Y.: "Superanoxia across the Permo-Triassic boundary recorded in pelagic chert in Japan." Canadian Society of Petroleum Geologists Memoir. no.17. 805-812 (1994)
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[Publications] 磯崎 行雄: "古生代/中生代境界での大量絶滅と地球変動" 科学. 65. 90-100 (1995)