1995 Fiscal Year Annual Research Report
電子エネルギー損失分光法を用いた薄膜成長機構に与える水素原子の役割に関する研究
Project/Area Number |
06452119
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Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
安田 幸夫 名古屋大学, 工学部, 教授 (60126951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩野 博隆 名古屋大学, 工学部, 助手 (50252268)
財満 鎮明 名古屋大学, 工学部, 助教授 (70158947)
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Keywords | 高分解能電子エネルギー損失分光法 / 水素 / エピタキシャル成長 / 表面拡散 / 表面偏析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高分解能電子エネルギー損失分光(HREELS)法を用いて、エピタキシャル成長及び選択成長などの成長初期における結晶表面状態の評価を行い、それらの成長過程を決定することである。特に、膜の成長を大きく左右する水素の役割に着目し、IV族半導体エピタキシャル成長機構及び膜の結晶性に与える表面吸着水素の影響について調べた。得られた主な結果は以下の通りである。 1)Si (100)表面における水素の吸着は、ダイマーのダングリングボンドに吸着した後、Si-Siダイマー結合を切って吸着しダイハイドライド構造を形成する。水素飽和吸着面からの水素の熱脱離も二段階の脱離過程を持つ。最初の水素の脱離は熱処理温度300℃から始まり、この脱離により水素の吸着状態はダイハラドライド状態からモノハイドライド状態に変化する。第二段階の水素の脱離は熱処理温度400℃から起こり、Si-H状態からの水素の脱離に対応する。このときの活性化エネルギーは2.3eVであった。 2)基板温度550℃以下のSi (100)基板上のSi膜のエピタキシャル成長においては、成長の活性化エネルギーが上記の水素脱離のそれと一致しており、水素の脱離反応が成長を律速することがわかった。また、Si膜を成長するときに原子状水素を同時供給すると、水素の方面被覆率が増加し、成長速度を抑えるだけでなく、Si原子及びSi水素化合物の表面拡散を阻害する効果を持つことが明らかになった。 3)Ge2.5ML/Si (100)基板上のSi膜の成長において、Ge原子の表面偏析が観察され、成長速度の変化からその減衰長を見積もった。原子状水素を同時供給することにより、Ge原子の表面偏析が抑制されたが、成長条件によってはSi膜が3次元島状成長することがわかった。この結果は、表面吸着水素がSi膜の成長機構にも大きく影響を及ぼすことを意味している。この成長メカニズムについては現在検討中である。
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