Research Abstract |
竜巻に襲われた地域の被害を調べると,建物,鉄塔等の構造物の破損の度合が場所によって大きく異なり,またそれらの転倒方向にも規則性が乏しい。これは,竜巻の接近につれて,各々の地点における風速と風向は時々刻々変化し,これに伴って各地点の物体に作用する風力の大きさとその方向が時間的にも空間的にも大きく変化するためであると考えられる。本研究は,実際の竜巻の通過に伴い,任意の地点に位置する構造物に作用する非定常力を推定し,台風や季節風時の定常流による風力と比較検討して,その違いを明らかにすることにある。 竜巻の発生装置を用いた実験や,現実の竜巻の写真測量による解析結果によると,地表面の極近傍を除くと渦のコア内部と外部の接線速度はRankineの結合渦で近似できる。また,渦の中心に向う半径方向の速度成分は,地表面付近を除くと接線速度成分に比べて小さくなる。前年度の研究では,竜巻をRankine渦である一定の速度で移動する現象と仮定し,竜巻の通過に伴い任意の地点に生じる水平方向の非定常流れを解析し,1)任意の地点の速度ベクトルと加速度ベクトルは,竜巻の通過に伴って,連続的に変化し,それらの大きさは竜巻のコア上で最大になる,2)加速度は,竜巻の移動速度に関係せず,渦の中心に向かう方向に作用する,等の知見を得た。 今年度は,まず,この非定常流(加速度流)によって物体に生じる慣性力(圧力勾配による力と付加質量力の合力)を速度ポテンシャルを用いて解析し,その結果を風洞実験により検証した。さらに,Morisonの仮説に基づいて,物体に作用する非定常力を計算し,1)最大の風力は物体が竜巻の風下側のコア上にくるときに生じる,2)このときの加速度による慣性力は,速度の2乗による抗力の30%にも達する,3)物体の転倒方向は,竜巻の進行方向に向かって中心より右側では左方向,左側では逆に右方向になる場合がある,等の成果を得た。
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