1994 Fiscal Year Annual Research Report
酸化チタン被覆の光照射カソード防食能に関する基礎研究
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06452324
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻川 茂男 東京大学, 工学部, 教授 (20011166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 正 東京大学, 工学部, 助教授 (70187376)
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Keywords | 半導体電極 / 酸化物半導体 / 酸化チタン / カソード防食 / 光電気化学 / ゾルゲル法 |
Research Abstract |
TiO_2はn型の酸化物半導体であり、光照射下で電流(光電流)の増大にともない電位(光電位)が卑化する。しかも、ここでのアノード反応は水の酸化(H_2O→1/2 O_2+2H^+)であってTiO2そのものの劣化を伴わないため、それより貴な金属材料を比犠牲的にカソード防食できる。本研究では、ITO(Indium Tin Oxide)をコーテイングしたガラス基板、ステンレス鋼(304鋼)およびCuの上に、ゾルゲル法によってTiO_2膜を被覆し、その光電気化学的性質を調べるとともに、防食性能について調べた。 ガラス基板では、TiO_2が結晶化する約400℃を境として、これ以上で焼成した場合に光電流の増大およびこれにともなう光電位の卑化が見られた。これに対してステンレス鋼では、250℃で焼成した場合に光電位が最も卑になった。300℃以上で焼成すると、光照射下での電位卑化が生じなくなるとともに、場合によっては、被覆が溶解してしまうこともあった。被覆層を分析した結果、膜中にはステンレス鋼の主成分であるFe,CrおよびNiが検出され、焼成時におけるこれら元素の被覆層中への拡散が影響しているものと考えられる。また、膜厚については、2回(約0.2μm)以上コーテイングすれば光効果が生じることがわかった。このような最適条件下で作製したTiO_2被覆鋼の光電位は約-500mV.SCEまで卑下し、3%NaCl水溶液中での304鋼の金属/金属-すきまでの再不動態化電位-400mVより卑になった。すなわち、光照射下では、すきま腐食をも防ぐことができる。実際の太陽光を照射しつつ光電位を測定すると、夜間でも-300〜-200mVというかなり卑な電位を保った。このような光効果の記憶により、夜間においても防食が行える可能性が示された。この効果は、ガラス基板では現われないTiO_2被覆鋼独特の挙動であり、今後その機構解明を行っていく予定である。 Cuについては、TiO_2の結晶化温度(約400℃)より高い600〜700℃で焼成すると光電位が最も卑になった。これは、表面に存在するCuの酸化物の影響であり、最適温度以下の温度で焼成した場合でも、その酸化物を予め十分にカソード還元すると、光電位の卑下が生じた。ここでの光電位は不感域にあり、Cuを熱力学的に金属が安定な電位にまで卑化させることで防食できることがわかった。
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Research Products
(2 results)