1994 Fiscal Year Annual Research Report
疲労機構解明のための疲労き裂先端の塑性変形の実時間測定
Project/Area Number |
06452326
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
肥後 矢吉 東京工業大学, 精密工学研究所, 教授 (30016802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下条 雅幸 東京工業大学, 精密工学研究所, 助手 (00242313)
熊井 真次 東京工業大学, 精密工学研究所, 助手 (00178055)
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Keywords | 疲労き裂伝播機構 / 塑性変形 / 不動態皮膜 / 分極電流 / 原波形解析 |
Research Abstract |
材料の開発は高強度材料から高信頼性材料へと移行している。ここで問題となっているのは、繰り返し荷重あるいは温度変化に伴う材料の疲労劣化と破壊である。特に疲労き裂に関しては、その伝播機構が未だ充分に解明されていない。この原因は、疲労き裂先端の極微小な領域で生じる塑性変形が材料表面でしか測定できない点にある。本研究は、き裂内部の極微小な領域で生じる塑性変形を直接観察する方法を開発し、疲労き裂の伝播機構を考察することを目的として行われた。 溶液中、定電位で不動態化している金属に塑性変形を与えると、不動態皮膜に覆われていない金属の面が生成し、この面は急速に不動態化し、分極電流が観察される。本研究では、音響学で用いられる原波形解析の手法を応用した波形解析ソフトウェアを作製し、観察される分極電流を解析した。これにより、従来測定できなかったき裂先端で起きる微小な塑性変形の量を実時間で定量化することが可能となった。この手法を用いて、純チタンで疲労き裂伝播試験を行い、負荷荷重の変化に伴って起きる塑性変形量の変化を測定し、従来より提案されている疲労き裂伝播機構のモデルと比較した。従来のモデルのうち最も有力視されているものの一つにき裂先端でふたつのすべり系が交互に働くモデルがある。しかし、このモデルによって予想されるき裂開口量に対する塑性変形量の変化と、今回実際に測定された塑性変形量の変化とは異なっていることが明らかとなった。このことより、き裂先端でふたつのすべり系が交互に働くだけではなく、別の塑性変形がき裂先端付近で起きていることが見いだされた。このことは、従来提案されている疲労き裂伝播モデルでは定量的に示されておらず、疲労き裂伝播モデルに新たな方向を示すものである。
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