1994 Fiscal Year Annual Research Report
高強度・高じん性オーステンパ球状黒鉛鋳鉄の開発と構造部材への適用に関する研究
Project/Area Number |
06452336
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Research Institution | Daido Institute of Technology |
Principal Investigator |
青山 正治 大同工業大学, 工学部, 助教授 (50075892)
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Keywords | 球状黒鉛鋳鉄 / オーステンパ熱処理 / 耐腐食性 / 衝撃試験 / 熱処理 |
Research Abstract |
本研究は,鋼に匹敵する高強度・高じん性、低温および腐食環境下での使用を考慮した耐候性オーステンパ球状黒鉛鋳鉄製ボルトの開発とその最適熱処理条件を明らかにし,締結部材の信頼性確保において重要である各種の材料評価試験はもとより,耐腐食性環境下の特性向上についてミクロな構造・組織の立場から解析を進め,本材の実用化および用途開発を目指したものである。 6年度の研究実施計画にしたがって次の事項を遂行した。1)鉄系金属で腐食性の面から優れた特性を示す鋳鉄材料に,さらなる耐候性・熱処理特質の向上に興味が持たれるNi・Cu添加球状黒鉛鋳鉄と比較材としてFCD500相当の球状黒鉛鋳鉄をY型ブロック及び実体構造物締結ボルトに溶製・鋳造した。2)製造した球状黒鉛鋳鉄と広範囲な種々のオーステンパ熱処理を施した熱処理材について,計装化シャルピー衝撃試験および静的引張試験を行い,強度および衝撃特性を評価し,最適熱処理条件を得るための試験・研究を進めた。 その結果,Ni・Cuの合金添加材の衝撃特性は,燃処理によって比較材に優る良好な衝撃特性を得た。その最適な熱処理条件は,623Kの恒温変態温度が強じん性の観点から最適であった。この623Kの恒温処理は,吸収エネルギーが20Jにも達し,破壊までに必要とする亀裂発生エネルギーが大きく,最大破壊荷重到達後にも亀裂伝播過程が生じており,極めて優れた高延性・高強度材料となった。これは,オースフェライト組織中に存在する残留オーステナイトによる。なお,恒温変態時間が衝撃特性に及ぼす影響は,合金添加の有無による差異は認められなかった。 引張強度は,恒温変態温度によって顕著な差が現れたが,従来の鋳鉄材料に優る1000〜1600MPaの高強度を得ることができた。また,合金添加材は,恒温変態処理時間が引張強度にも影響を及ぼさないことが明らかとなった。
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