1994 Fiscal Year Annual Research Report
放射収支成分に及ぼす都市面構造の影響とそのモデル化に関する研究
Project/Area Number |
06452380
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小林 守 筑波大学, 地球科学系, 講師 (10153644)
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Keywords | 長波放射 / 放射冷却 / 都市キャニオン / 都市面構造 / 遮蔽効果 / 熱画像 / 都市気候 |
Research Abstract |
都市高温化の主要因として、自然表面の人工面化と都市構造の高密度化に伴う放射場の改変が考えられる。この改変には、都市面構造の遮蔽効果が関与しており、幾何学的な遮蔽率だけでなく、複雑な素材で構成された都市面構造の放射・温度特性をも正確に捉える必要がある。それには従来の表面温度計による点的測定では不十分なため、本研究では赤外線熱画像装置(サーモトレーサ)を新たに用いて、表面温度の面的測定を行うことにより、「都市面構造が都市地表面における放射収支成分の改変に及ぼす影響」を野外観測に基づき厳密に捉え、ものモデル化を行うことを目的としている。今年度は初年度であり、瞬時視野角が小さく、携帯用の最新型のサーモトレーサ(NEC三栄)を導入し、当初の計画通り、比較的とり扱い易い夜間の長波放射場への影響について考察した。1.東西軸の街路をもつ都市キャニオン(ビル空間)を対象に、屋上面・街路樹のある都市地表面・街路樹のない都市地表面の3地点での放射成分、キャニオン構成面の表面温度、遮蔽率などの測定を、8〜9月の8日間連続で行い、暖候季の晴天夜・曇天夜の資料を取得することができた。解析の結果、夜間の都市キャニオンでは、屋上面に比べ下向き長波放射の顕著な増加のため放射冷却が著しく抑制(正味放射が減少)されるが、街路樹は放射冷却を若干促進する作用を持ち、これらの作用は曇天夜より晴天夜に大きいことが判明した。2.単一のビルを対象にした、屋上面と地表面5地点における、12月の6日間の同様な測定により、ビルが地表面の下向き長波放射に影響を及ぼす範囲はビル高の約2倍であることなどが判った。3.熱画像装置による面的測定では素材による表面温度の相違はもとより、同種の素材でも場所による相違が予想以上に明瞭に検出されているので、厳密なモデル化が期待できる。次年度は、今年度の成果をふまえ、日中の測定も行い、モデル化に挑戦したい。
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