1994 Fiscal Year Annual Research Report
鉄・マンガン水酸化物と水溶液間の希土類元素の分配に関する実験的研究
Project/Area Number |
06453007
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川邊 岩夫 名古屋大学, 理学部, 助教授 (40127890)
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Keywords | テトラド効果 / 希土類元素分配 / 鉄・マンガン水酸化物 |
Research Abstract |
(1)NaCl水溶液(I=0.1-0.5M)と(Fe,REE)(OH)_3のあいだに於けるREE^<3+>の分配係数をpH=5-6,T=20-35℃の実験条件でもとめた。このような条件下では,分配係数はNaCl濃度に依存した系統的変化を示さず,REEとCl^-イオンの錯体形成効果は無視できることが判った。得られた分配係数にはテトラド効果が明瞭に認められるが,LaからEuまでとTmからLuまでの部分にはテトラド効果では説明出来ない変化も見られる。これらはREE^<3+>(aq)のLREEに於ける配位数変化とHREE(OH)_3における六方晶系から立方晶系への構造変化を,それぞれ反映したものである。更に広い温度範囲でのデータを得るべく実験を継続している。 (2)Jorgensen-Kawabeの理論式から,REE^<3+>(aq)のLREEに於ける配位数変化と同形型REE(III)錯体の溶解・錯生成反応の熱化学パラメーターのテトラド効果について考察した。そして,REE^<3+>(aq)のLREEに於ける配位数変化を伴う構造変化の熱化学パラメーターを求めた。さらに,REE^<3+>(aq)を含むいくつかのREE(III)錯体種間のRacahパラメターの系統的変化を発見した。これらの成果は,2編の論文として国際誌に現在投稿中である。また関連するもう一つの論文を国内の英文誌に投稿し,査読後の改訂原稿を返送した状態になっている。 (3)本研究経費にて購入したICP-AES用の超音波ネブライザーは、ICP-AES測定において,これまでのネマッチックネブライザーに比べ,10-20倍の測定感度向上もたらすことを確認した。感度の安定性については,水晶発振子の汚染除去に注意すれは従来のネブライザーとそれほど違わない安定性が確保出来ることも判明した。ルーチン分析に威力を発揮している。 (4)分配係数に対する重炭酸・炭酸イオンの効果を検討し,これらの陰イオン濃度の増大がHREEの分配係数を大きく低下させることを確認した。これはREEイオンと上記の陰イオンとの錯形成定数がHREE側で大きくなることと良く対応しいる。この結果は,トレイサ-REEを用いて求められている単独REEイオンの炭酸・重炭酸イオンとの錯形成定数の値とは,定性的には一致するものの,定量的には一致していない。この不一致の理由については,現在検討中である。
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