1994 Fiscal Year Annual Research Report
安定ラジカルを含む常磁性金属錯体の合成のデザインと分光学的研究:磁気的交換相互作用の可変性と精密制御の創出
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06453049
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
海崎 純男 大阪大学, 理学部, 教授 (20089874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冬広 明 大阪大学, 理学部, 助手 (90156951)
山成 数明 大阪大学, 理学部, 助手 (40116124)
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Keywords | クロム(III)錯体 / ラジカル錯体 / スピン交換相互作用 / 磁気的相互作用 |
Research Abstract |
今年度は|Cr(acaX)_2(NIT2-py)|^+(X=H,Cl,Br)の合成と電子スペクトルおよび磁性の測定・解析を行い、ラジカルとクロム(III)錯体間の磁気的な相互作用は反磁性的であり、また錯イオン間の磁気的相互作用も通常のクロム(III)錯体に比べて、大きいことがわかった。これに引き続き、|Cr(acaX)_2(NIT2-py)|^+(X=CH_3)の合成に成功したので、同様に磁気・光学的特性の検討を加えた。その結果、メチル誘導体の場合は、これまでの反磁性的な相互作用を示すNIT-2py錯体とは違って、ラジカルとクロム(III)錯体の間には強磁性的相互作用が見られた。しかし、電子スペクトルには、スピン禁制帯の強度増大がいずれも観測され、大きな違いは見られなかった。さらに、脂肪族エチレンジアミン配位子を含む|Cr(en)_2(NIT2-py)|^+の合成を試みたが、今の所、複塩の形で、なおかつ、再現性には問題があるものの元素分析からは|Cr(en)_2(NIT2-py)||Cr(en)_2(CH_3CN)_3|(CF_3SO_3)_6・2H_2Oとして得られたものと考えられる。これは電子スペクトルでも、スピン禁制帯の強度の増大が見られたことから、ラジカルとクロム(III)錯体の磁気的な相互作用の存在が明らかであることがわかった。 現在、tempo=Oとtempo-NH_2をラジカル配位子とする|Cr(acac)_2(tempo=O or tempo-NH_2)_2|^+の合成を試みているところである。元素分析からは組成的に確認できたが、ほとんどで通常のクロム(III)錯体と変わりない電子スペクトルが観測され、ラジカルとクロム(III)錯体との磁気的相互作用が小さいことがわかった。これからは、ESR測定によって、ラジカルの存在を確認する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Narumi Sakagami: "Crystal Structures of the (Ethylenediamine-N,N′-dipropionato)-(ethylenediamine)cobalt(III)Isomers." Bull.Chem.Soc.Jpn.67. 680-686 (1994)
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[Publications] Sumio Kaizaki: "Structural Charaterization of Octahedral Metal Complexes of[MX_3(PY)_3]Type with Three Pyridines as Revealed by ^2H NMR Spectra." Inorg.Chim.Acta. 218. 179-184 (1994)