1995 Fiscal Year Annual Research Report
動物細胞培養系のオンラインモニタリングシステム構築のための基礎研究
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06453105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長棟 輝行 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20124373)
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Keywords | 動物細胞培養 / オンラインモニタリング / FT-IR / 逆浸透膜濃縮 / 抗原抗体反応 |
Research Abstract |
本研究では、動物細胞培養系の培養液中のグルコースやグルタミンなどの基質、乳酸などの代謝産物、抗体やサイトカインなどの生産目的蛋白質など、各種成分濃度を赤外吸収スペクトルを用いて総合的にオンラインモニタリングする技術を開発することを目的としている。 本年度は、第一に、動物培養系におけるグルコース、グルタミン、乳酸の実用的濃度範囲をATR-FT-IRスペクトルから求めるためには、サンプル液を10〜100倍に濃縮する必要があるという前年度の検討結果を踏まえ、逆浸透膜を利用したサンプル濃縮装置を試作し、その性能評価を言った。ポリアミド/ポリビニールアルコール系の逆浸透膜を用いた場合には、装操作圧2MPaの条件で2g/lのグルタミン溶液およびグルコース溶液を阻止率がそれぞれ99%、95%で約50倍に濃縮することが可能であった。また、2g/lの乳酸溶液を同様な条件で濃縮したが、阻止率は約60%と低く、逆浸透膜法は乳酸の濃縮に適さないことが明らかとなった。さらに、アルブミン1g/l、グロブリン1g/lおよび上記の各成分2g/lを溶解した模擬動物細胞培養液を同様に濃縮した場合には、阻止率は各成分単独の溶液の場合と比較して向上したが、濃縮倍率は約20倍が限界であった。酢酸セルロース系の逆浸透膜を用いた場合には、ポリアミド/ポリビニールアルコール系を用いた場合し比較して、全般的に阻止率が低かった。 第2に、抗体一抗原反応を利用したELISA法により生成した反応物質の量をFT-IRで測定することにより、間接的に抗体濃度を測定できるという前年度の成果を踏まえ、基板上への抗原の安定な固定化方法について検討を行った。すなわち、抗原の基板上への固定化方法として、親水性部位にDNP抗原を導入した脂質の単分子膜をLB膜技術で疎水性処理したガラス基板に形成する方法と、分子の両端にチオール基とDNP基を持つ分子を金蒸着したガラス表面に化学的吸着法により自己組織的に固定化する方法について検討した。その結果、金とチオール基の化学的吸着法による固定化が安定性、均一性の点で優れていることを明らかにした。さらに、ELISA法に用いる標識酵素、基質を種々に検討した結果、グルコースオキシダーゼ、グルコースの組み合わせが、FT-IR測定に適していることがわかった。
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