1994 Fiscal Year Annual Research Report
金属酸化物ブロンズの低温合成とその電気物性に関する研究
Project/Area Number |
06453118
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 徹一 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90205097)
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Keywords | 過酸化ポリタングステン酸 / セシウムタングステンブロンズ / パイロクロア相 / 六方晶相 / バリウムタングステンブロンズ / 還元焼成 / カリウムタングステンブロンズ / 水蒸気センサ |
Research Abstract |
1.パイロクロア型セシウムタングステンブロンズ(Cs_xWO_3) 金属酸化物ブロンズは、通常、成分金属酸化物と金属粉末の混合物を封菅中、1000℃付近で長時間焼成するというMagneli法によって合成される。ここでは、過酸化ポリタングステン酸(H-PPT)に臭化セシウムを作用させて得られる塩(Cs-PPT)を700℃程度の比較的低温で水素還元するという方法を試みたところ、Cs-PPT中のCs/W比(=x)に応じて六方晶相やパイロクロア相のブロンズがそれぞれ単相の物質として得られることが明らかになった。六方晶相はMagneli法でも合成できるが、パイロクロア相は本研究の方法で初めた得られた全く新しいタイプのブロンズである。その粉末XRDプロファイルのRietveldフィッティングにより、格子定数および酸素位置パラメーターが決定された。 2.六方晶バリウムおよび鉛タングステンブロンズ 正方晶バリウムタングステンブロンズは古くから知られる化合物であるが、六方晶相となると超臨界水中で合成されたという報告があるくらいでその存在は未だ明確ではなかった。本研究では、上記と同様な方法で形成した前駆体Ba-PPTを600℃付近で精密に温度制御された条件の下に水素還元すると、純相の六方相バリウムタングステンブロンズ(Ba-HTB)が生成することを見出した。Ba-HTB(Ba_xWO_3)は、xが小さいときは半導体的挙動を示すが、x=0.21の組成で金属に転移する。磁化率の測定において確認された同様の転移についても考察中である。一方、これまでに報告例のない六方晶鉛タングステンブロンズも、Pb-PPTを還元焼成することによって得られ、この化合物の電子構造がBa-HTBといかに異なるかに興味がもたれる。 3.六方晶カリウムタングステンブロンズ(K-HTB) K-PPTを500℃で還元焼成して得られるK-HTBは、Magneli法によるものと基本的には同じ結晶構造をとり、導電性もともに金属的である。しかし、前者は水蒸気に触れると抵抗率が著しく増大して、半導体から絶縁体にまで変化するという後者には見られない性質を示す。これは前者が低温で合成された結果、特異な欠陥構造を有しているためと考えられる。抵抗変化は水蒸気濃度の変化に対して可逆的に振る舞うので、この現象の機構を解明しつつ、水蒸気センサへの応用を検討している。
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