1995 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄官能基の隣接基効果を利用する新しい選択的合成反応の開発
Project/Area Number |
06453132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西郷 和彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (80016154)
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Keywords | 隣接基関与 / スルフェニル基 / Lewis酸 / カチオン / カチオン環化反応 / スルホン / 高次有機銅錯体 / アセチレン |
Research Abstract |
申請者らはこれまでに,スルフェニル基のβ-位に対する隣接基効果を利用した選択的合成反応を行ってきた。今回,分子内に求核攻撃可能なオレフィン部位を有する基質からエピスルホニウムイオンを生成させることによって、容易に環化反応が進行することを見出した。例えば,シトラールに対してフェニルチオメチルリチウムを作用させた後,アセチル化して得られる基質では,Lewis酸の作用により容易に環化が進行し,cis-4-イソプロペニル-1-メチル-3-フェニルチオシクロヘキセンが立体選択的に生成した。このように,自由度の小さいシクロヘキセン環やシクロペンタン環が生成する場合はcis-体が選択的に得られる。これに対して,飽和でより自由度の大きいシクロヘキサン環が生成する場合はcis,transの混合物が生じるが,スルフェニル基としてかさ高い2,4,6-トリイソプロピルフェニルチオ基を用いることにより,逆にtrans-体が立体選択的に合成できる。本反応は各種のテルペン類やステロイド類の合成に極めて有用な手法であると考えられる。 当研究室では,既にジチアンとアルデヒドとの反応により得られる基質に対してLewis酸を作用させると,硫黄官能基の隣接基関与,転位環拡大を伴い,1,4-ジチエピン誘導体が生成することを見出している。さらに,この化合物を酸化して得られるジスルホニルアルケンに有機銅試薬を作用させると置換反応ではなく,スルホニル基が還元的に脱離したアセチレン類が生成することを見出した。検討の結果,シアン化銅(1)と3等量のアルキルリチウムから調整した高次有機銅錯体が本反応に最も有効であることが分かった。さらに,同様の骨格を有するスルホニルケテンジチオアセタールやβ-ケトスルホンから誘導されるエノールホスファートでも同様の還元脱離反応が進行することを見出した。いずれの反応もアセチレン誘導体の合成法として極めて興味深い手法である。
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Research Products
(1 results)