1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06454029
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 雅啓 東京大学, 理学部, 助教授 (20093221)
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Keywords | マツバラン / 地下茎 / 頂端細胞 / 分枝様式 / 相同 / 系統発生 / 斜分裂 / 分子系統 |
Research Abstract |
1.マツバランの地下茎の分枝様式と分裂組織を調べ,その相同性を検討した.物理的な影響や損傷によって2次的に分枝が乱れる可能性を除くために水耕培養を行ったところ,地下茎は不規則な分枝を示した.その要因を探るために頂端分裂組織の動態を調べた.地下茎の頂端細胞から切り出された派生細胞の多く(約50%)が細胞壁に対して斜分裂(通常の分裂は垂直)を3回行って頂端細胞と同じ4面体細胞をつくる.4面体細胞ができる位置は予測がしがたく,新頂端細胞が茎頂の不定の位置にできることによって地下茎の分枝が不規則になることがわかった.このような頂端細胞の形成様式は他の維管束植物にはみられない特異なもので,通常の二又分枝では,元の頂端細胞が消失する一方で2個の新しい頂端細胞が分裂組織の周縁部につくられ,そのため分枝が規則的に起こる.さらに,つくられた4面体細胞のすべてが頂端原始細胞にならず,その約半分は新しい枝の頂端細胞になるが,残りの半分は体細胞として消失する.このように頂端細胞が形成される過程が不確定である性質も他に類例をみないものであり,根茎の分枝を一層不規則にしている.これらの分裂組織の動態と,葉や根冠を欠く器官・組織的な性質とを合わせて考えると,マツバランの地下茎は現存の軸状器官(茎、根、担根体)とは異質の,分化の程度が低い器官であるとみることができる.この地下茎は進化的にみて茎や根が系統分化する前の,化石器官とでも呼べる器官の可能性がある. 2.マツバラン綱の1種とヒカゲノカズラ綱の数種について葉緑体DNAのrbcL遺伝子の塩基配列を決定した.それを基に系統樹を作成し,これらのシダ植物がほかの種とは系統がかれ離れていることが確かめられた.
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