1994 Fiscal Year Annual Research Report
地球環境変化とイネの生理・生態:持続可能な食糧生産の基礎
Project/Area Number |
06454047
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今井 勝 筑波大学, 農林学系, 助教授 (20125991)
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Keywords | イネ / 環境制御 / 乾物生産 / 光合成 / 食糧生産 / 生理生態 / 地球環境 / 無機成分 |
Research Abstract |
平成6年度は植物育成用グロースキャビネット(特注品)を購入し、(1)先ずその運転を行い、光・温度・湿度が適正に制御されるか否かを検定した。その結果イネを育成するには十分の環境制御能力のあることが分かった。次に、(2)別途購入のCO_2コントローラーを接続して、各種の温度・CO_2濃度下でイネを栽培した。その結果、(3)昼/夜の温度が28/23℃で、CO_2濃度が350ppm(標準)または700ppm(高CO_2)とした場合、イネの光合成は高CO_2濃度により促進され、乾物生産の増進も大きくなるが、葉の形態を電子顕微鏡によって調べたところ、葉緑体の中に多くの大きなデンプン粒の形成されることが分かった。これは、葉の光合成能力が本来のものよりも低下していることを意味する。そこで、炭水化物代謝に重要な役割を演じるリンを培養液に加えたが、リンが十分にある場合、却ってデンプン蓄積が増した。これはイネの生育段階とソース/シンク関係で原因の説明ができた。また、(4)培養液の窒素濃度を変えてイネを栽培したところ、イネの生育は標準の濃度の4倍程度まで、窒素濃度上昇に伴って促進され、しかも、高CO_2濃度下でその促進は大きかった。収量についても同様であったが、玄米の無機成分含有率をプラズマ発光分光分析装置により調べたところ、高CO_2濃度下で生育を遂げたイネは玄米により多くの窒素を含み、マグネシウムの濃度は逆に低下する傾向が見られた。これは将来、大気中のCO_2濃度が上昇した場合に、コメの品質低下が起こることを示唆する。現在までに得られた成果は以上であり、これらは、日本生物環境調節学会および第2回アジア作物学会議にて報告を行う予定である。
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