1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06454098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒倉 寿 東京大学, 農学部, 助教授 (50134507)
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Keywords | 凍結 / 水棲動物 / 幼生 / 胚 / 受精卵 |
Research Abstract |
生物の構造的・生理的特性と耐凍性の関係を論ずるため,ヒラメ受精卵,フジツボ、カキ幼生,シオミズツボワムシ胚を材料として凍結保存を試みた.このうち,ヒラメ卵については、液体窒素中に保存解凍後に孵化する卵を得ることは出来なかったものの,-30℃までの凍結融解実験では,耳胞形成期以後の卵で生存個体が得られた.媒液の浸透圧は海水に近い1000mOsm程度が適当であった.フジツボ孵出幼生では,孵出直後のノ-プリウスIおよびII期の幼生で液体窒素中に凍結保存後,高い割合で生存胚を得ることが出来た.これらの幼生は脱皮を行い,それぞれより進んだステージへと変態を行ったが、変態時の死亡率は,非保存幼生に比べて高く,最終的に、キプリス幼生を経て付着個体となったものはごく僅かであった(1%以下).カキ幼生は,トロコフォア幼生になった後に耐凍生が高まり,液体窒素に保存解凍後にD型幼生期まで発生を進めることに成功した.シオミズツボワムシ胚でも同様に,発生段階による耐凍性の違いが認められたが,その変化は複雑で,初期には徐々に耐凍性が高まり,対称(Symmetrical)期には急激な耐凍性の高まりが見られたが,それ以後の段階では反対に耐凍性が低下した.また,シオミズツボワムシの成体でも,液体窒素中に保存解凍後に,生存する個体を得ることが出来たが,摂餌することなく短時間の間に死亡した,形態的な観察によると,解凍後の成体は,繊毛環の繊毛に損傷を受けており,特にこの部分の損傷のために,摂餌することなく死亡するものと思われた.各動物の初期幼生が比較的凍結耐性が低いことの原因として、脂質を多く含むこと、個々の細胞径が大きいことが考えられた.また,シオミズツボワムシの例からは,耐凍性の低い器官が分化することによって,発生の進行にともなう耐凍性の低下がもたらされるものと推測された.
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