1994 Fiscal Year Annual Research Report
マウス遺伝学的手法によるカテコールアミン神経系の機能に関する総合的研究
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06454182
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
小林 和人 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所(神経化学), 講師 (90211903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永津 俊治 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所(神経化学), 教授 (40064802)
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Keywords | カテコールアミンニューロン / チロシン水酸化酵素 / ドーパミンβ-水酸化酵素 / フェニルエタノールアミンN-メチル転移酵素 / アドレナリン受容体 / イムノトキシン細胞標的法 / トランスジェニックマウス / ジーンターゲティング |
Research Abstract |
(1)神経伝達物質カテコールアミン特異性の遺伝的変換---ノルアドレナリンニューロンで機能するドーパミンβ-水酸化酵素(DBH)遺伝子のプモーターの下流にアドレナリン合成酵素であるフェニルエタノールアミンN-メチル転移酵素(PNMT)cDNAを連結した融合遺伝子を導入したトランスジェニックマウスについて、交感神経標的臓器におけるカテコールアミン代謝の変化およびアドレナリン受容体(AR)の結合特性に与える影響について解析した。放射性リガンド結合実験およびmRNA量の解析から、トランスジェニックマウスの交感神経におけるカテコールアミン特異性の変換によって、標的臓器に存在するβ1-およびβ2-ARの発現量の調節が誘導されることを見い出した。(2)脳内ノルアドレナリンニューロンの選択的破壊---イムノトキシンを利用して、トランスジェニックマウス中枢神経系の特定細胞を条件的に破壊する新しい方法論(イムノトキシン細胞標的法)を開発した。DBH遺伝子プロモーターの制御下に、ノルアドレナリンニューロンにおいてヒトインターロイキン-2レセプターαサブユニット(IL-2Rα)を特異性に発現するトランスジェニックマウスを作成した。抗IL-2Rα抗体と緑膿菌細胞毒素から構成されるイムノトキシンをトランスジェニックマウスの脳室内に投与した結果、この動物に特徴的な行動異常が出現し、導入遺伝子を発現するニューロンの選択的変性が誘導された。本法は、特定の神経細胞を条件的に破壊し、その細胞の生理的役割を解明するばかりでなく、神経変性に基づく疾患の病態モデルを作成するために有意義であることが示された。(3)マウスチロシン水酸化酵素(TH)遺伝子の欠損とヒト遺伝子による置換---ES細胞を利用したジーンターゲティング法によって、カテコールアミン合成の第一段階を触媒するTHの遺伝子をノックアウトした変異マウスを作成した。THミュータントにおいて、本酵素の活性は完全に欠損し、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンはいづれも極度の減少を示した。THミュータントは胎生12.5日までは正常に発生するが、周生期においてカテコールアミン機能の欠損により致死となることが判明した。ヒトTH遺伝子を含むトランスジーンをノックアウトマウスに導入することによって、ミュータント表現型は正常に回復した。以上の結果から、TH遺伝子は胎生期および新生期における動物の生存に必須であることが明らかとなった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] K.Kobayashi: "Functional and high level expression of human dopamine β-hydroxylase in transgenic mice" J.Biol.Chem.269. 29725-29731 (1994)
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[Publications] I.Nagatsu: "Expression of human tyrosine hydroxylase-chloramphenicol acetyltransferase fusion gene in the brains of transgenic mice by CAT immunohistochemistry" J.Neural Transm.96. 85-104 (1994)
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[Publications] K.Kobayashi: "Immunotoxin-mediated conditional disruption of specific neurons in transgenic mice" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 92. 1132-1136 (1995)
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[Publications] C.Sumi-Ichinose: "Analysis of the alternative promoters that regulate tissue-specific expression of human aromatic L-amino acid decarboxylase" J.Neurochem.64. 514-524 (1995)
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[Publications] K.Kobayashi: "Alteration of catecholamine specificity in transgenic mice influences expression of adrenergic receptor subtypes" J.Neurochem.(in press). (1995)
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[Publications] K.Kobayashi: "Targeted disruption of the tyrosine hydroxylase locus results in severe catecholamine depletion and perinatal" J.Biol.Chem.(submitted).
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[Publications] 小林和人: "マニュアル疾患モデルマウス" 中山書店, 397 (1994)