Research Abstract |
ダイエットなどで大きな体重の増減を繰り返すことをウエイト・サイクリングというが,このウエイト・サイクリングが動脈硬化の危険因子に及ぼす影響について,昨年度に引き続き検討を行った。対象は昭和52年より追跡調査を行っている男性工場従業員である。基礎データは毎年蓄積されるので,平成7年度のデータの入力を新たに行い,そのデータを加えた19年間の継続データについて解析した。今年度の研究対象者数は12,763名,延べ13,3411件となった。追加したデータを加え,昨年と同様,追跡期間中の体重の平均変動幅と動脈硬化危険因子の相関について,年齢,BMI,体重の年間変化率で補正し検討した。ウエイトサイクリングがこれらの危険因子に及ぼす影響は,年齢によって大きく異なり,35歳未満の若年者では血圧,血清脂質への影響が強かったが,50歳以上の者では動脈硬化危険因子へのウエイトサイクリングの影響はまったくみられないこと,体重変動の正常範囲は,血圧や血清脂質など検査項目によって異なるが,年平均4kgまでの体重変動ならばどの検査値に対しても影響は小さいことが確認された。また一回のウエイト・サイクリングの前後での危険因子の変動についても検討し,中性脂肪,フィブリノーゲンなどが1回のウエイト・サイクリングで有意に増加していることが示された。ウエイト・サイクリングと身体のストレスとの関連から,最初の5〜8年間の追跡期間中のウエイトサイクリンの大きさを,その後の追跡で胃・十二指腸潰瘍を生じた群80名と生じなかった群1,619名とで比べたが,有意な差は得られなかった。追跡期間中に死亡が82名確認された。しかし,これらの死亡者の追跡開始から5〜8年間のウエイト・サイクリングの大きさは有意に大きくはなっていなかった。胸部X線での大動脈弓石灰化については,対象者が60歳以下のため追跡期間中に新たに生じた例はほとんどなく解析できなかった。追跡期間中に300名に心電図の虚血性変化が出現したが,ウエイト・サイクリングの大きさはむしろこの群で小さくなっていおり予想された関係は,今回得られなかった。また対象のうち120名を選び,ウエイト・サイクリングに関する聞き取り調査,詳細な生活調査や,精神心理学的調査を行い,実際の体重変動との関連の検討をおこなった。
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