1994 Fiscal Year Annual Research Report
組換えワクシニアウイルスによるHTLV-I感染の予防
Project/Area Number |
06454347
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Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
三好 勇夫 高知医科大学, 医学部, 教授 (30033088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 延真 高知医科大学, 医学部, 助手 (00243840)
田中 優治 高知医科大学, 医学部, 助手 (40243828)
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Keywords | HTLV-I / 組換えワクシニアウイルス / ワクチン |
Research Abstract |
HTLV-Iは日本に多い成人T細胞白血病(ATL)の病因ウイルスである。HTLV-Iの主な感染経路は輸血、母乳、性交である。1986年以来供血者の抗体検査が行われるようになり、輸血感染の心配はなくなった。しかし、母乳感染と夫婦感染に対してはいまだ統一的対策がとられていない。そこで、本研究においてはワクチンの開発を目的としてHTLV-Iのenv遺伝子を組み込んだワクシニアウイルスがHTLV-Iの輸血感染を予防するか否かを検討した。 組換えワクシニアウイルスと対照のワクシニアウイルスを各々3匹のウサギに皮内注射し、10週後にHTLV-I感染ウサギから5ml輸血した。組換えワクシニアウイルスで免疫したウサギでは、抗env抗体の産生が認められたが、vesicular stomatitis virus(HTLV-I)pseudotypeに対する中和抗体の産生は認められなかった。輸血感染後8週目にPCRにより末梢白血球からHTLV-I遺伝子の検出を試みたところ、ワクチンを投与したうち2匹がウイルスゲノム陽性で、1匹がウイルスゲノム陰性であった。一方、対照のウサギは3匹とも輸血感染が成立した。以上の結果、組換えワクシニアウイルスをウサギに接種しても中和抗体が誘導されなかったために、2匹のウサギに感染が成立したものと考えられた。しかし、中和抗体が存在しないにも拘わらず1匹のウサギで感染が予防できたことから、その機序に細胞性免疫の関与が想定された。 本研究によりHTLV-Iワクチンの開発にとって中和抗体の産生が重要であることが確認された。このことは高力価の中和抗体を有する免疫グロブリンによる受動免疫がHTLV-Iの感染予防に有効であるとするこれまでの私達の研究に合致する。
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