1995 Fiscal Year Annual Research Report
白血病細胞の細胞周期、増殖・分化およびアポトーシスの制御分子機構
Project/Area Number |
06454349
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
斎藤 政樹 北海道大学, 医学部, 教授 (60012762)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 尚雄 自治医科大学, 医学部, 助手 (10235111)
古川 雄祐 自治医科大学, 医学部, 講師 (00199431)
中村 充 自治医科大学, 医学部, 講師 (20198237)
大田 雅嗣 北海道大学, 医学部, 助教授 (90160514)
|
Keywords | 細胞分化の制御 / テネイシンC / アポトーシス抑制遺伝子bcl-2 / 水溶性細胞増殖因子EGF / アポトーシス感受性 / 間質・上皮間相互作用 / 細胞周期 / 細胞外マトリックス糖蛋白分子 |
Research Abstract |
本年度は「細胞分化の制御とアポトーシスとの関連性」並びに「癌細胞の増殖と細胞外マトリックス糖蛋白分子の発現制御との関連性」に関し、以下の研究成果を得た:(1)カウンターフロー遠心細胞分離機とアポトーシス/分化誘導剤とを応用して、未分化HL-60と分化したHL-60細胞、両者のアポトーシス感受性を細胞周期の各期で調べたところ、未分化細胞ではS期の細胞がG0/G1期又はG2/M期の細胞に比べアポトーシス感受性が高く、一方、分化誘導剤PDBuで単球系分化を誘導した細胞では、G0/G1期の細胞がS期やG2/M期の細胞に比べアポトーシス感受性が高いことが判明した。また未分化HL-60細胞では、G0/G1期にある細胞を再培養することによってS期細胞が増えるとアポトーシスが誘導される、一方、分化誘導されたHL-60細胞では、再培養によって細胞周期がG0/G1期に停止すると、アポト-ティク細胞が増加する。未分化のHL-60細胞では、アポトーシス抑制遺伝子bcl-2のmRNAレベルは細胞周期の各期で相異はないが、分化した細胞ではG0/G1期とS+G2/M期との間で、見かけ上の相異があり、後者では主としてG0/G1期でbc1-2のmRNA発現が抑制されることが、アポトーシスが誘導されることと密接に関連していると言える。(2)細胞外マトリックス糖蛋白分子テネイシンCは、腫瘍組織形成の際、間質・上皮間相互作用に基づいて、時間的、空間的に極めて限定された発現様式をとる。またそのde novo合成は間質・上皮間相互作用のもと、水溶性細胞増殖因子EGFによって誘導される。ヒトのテネイシンCはEGF様ドメインを持つが、それ自身、またはその部分ペプチドにはテネイシンC誘導効果が殆ど認められない。テネイシンC発現誘導の生理的な制御因子は未だ不明であるが、テネイシンC非産生性のヒト上皮性癌細胞において、EGFによって誘導されるテネイシンCの分泌及びそのmRNAの発現はステロイドホルモンによって抑制される。この効果はハイドロコーチゾンが最も高い。一方、ステロイドホルモンは、EGFによって誘導されるEGF受容体の自己リン酸化やde novo合成、EGFの受容体結合性に対しては殆ど効果がない。即ち、ステロイドホルモンによるテネイシンC発現抑制作用は、EGF・EGF受容体相互作用を介さないシグナル伝達系によるものと考えられる。
|
Research Products
(8 results)
-
[Publications] Tsunoda A.Nakamura M Kirito K,Hara K,Saito M: "IL-3 associated Expression of Gangliosidos in Mouse Myelogenous Leukemia NFS60 Cells Introduced with IL-3 Gene:Expression of Ganglioside GD1a and A Key Involvement of CMP-NeuAc:Lactosylceramide α 2,6-Sialyltransferase in GD1a Expression" Biochemistry. 34. 9356-9367 (1995)
-
[Publications] Terui Y,Furukawa Y,Ohta M,Sakoe K,Kitagawa S,Saito M: "Apoptosis during HL-60 Cell Differentiation is Closely Related to a G0/G1 Cell Cycle Arrest." J.Cell.Physiol. 164. 74-84 (1995)
-
[Publications] Terui Y,Furukawa Y,Ohta M,Sakoe K,Kitagawa S,Saito M: "Expression of Differentiation-related Phenotypes and Apoptosis are Independently Regulated during Myeloid Cell Differentiation." J.Biochem.117. 77-84 (1995)
-
[Publications] Furukawa Y,Ohta M,Terui Y,Kitagawa S,Miura Y,Saito M: "Preferential Production of Interleukin-1β over Interleukin-1 Receptor Antagonist Contributes to Proliferation and Suppression of Apoptosis in Leukemic Cells." Jpn.J.Cancer Res.86. 208-216 (1995)
-
[Publications] Sakai T,Ohta M,Furukawa Y,Saga Y,Aizawa S,Kawakatsu H,Saito M: "Tenascin Induction by the Diffusable Factor EGF in Stromal-Epithelial.Interaction." J.Cell.Physiol.165. 18-29 (1995)
-
[Publications] Furukawa Y,Terui Y,Sakoe K Ohta M,Miura Y,Saito M: "Over-expression and amplification of the cdc2 gene in leukaemia cell," Brit.J.Haematol.90. 94-99 (1995)
-
[Publications] 斎藤政樹: "「癌細胞の分化誘導とアポトーシス-癌分化誘導療法」(穂積本男、斎藤政樹、佐藤光信編)" 共立出版(株)(東京), 257 (1995)
-
[Publications] 斎藤政樹: "ガングリオシド研究法I,II-生物化学実験法35(鈴木康夫、安藤進編著)" ((株)学会出版センター), 521 (1995)