Research Abstract |
実験:7週齢の雌性ハムスターで共通管離断と胆嚢十二指腸吻合を行った胆道内膵液逆流(CD)モデルとは別に内因性CCK高値モデルとして胆嚢を十二指腸でなく,回腸(90%小腸)と吻合した(CI)モデルを作製した.ハムスターの総数27匹を用いてCD群,CI群,そして単開腹のみのコントロール群を作製し,術後2週目に屠殺し,血清CCK濃度と総胆菅の最大径を測定した.他の65匹を用いて,さらに3群を作製し,BOPを週1回10mg/kgbwを9週連続皮下投与した.投与後16週目に屠殺し,血清CCK濃度の測定と総胆菅の最大径の測定および胆道癌の発生率を検索した.さらに16週観察群の非癌部胆道上皮のパラフィン包埋切片を用いて,脱パラフィン,microwave oven処理の後,DAKO社の抗PCNA/HRPを用いて染色し,DABで発色した.PCNA labelling indices(LI)を算出し,非癌部胆道上皮の細胞増殖能を測定した. 結果:1)2週観察群;CD群の総胆管の最大径は,3.6±0.7mmでCI群0.5±0.1とコントロール群0.2±0.1に比べ有意に高値であった.CI群の血清CCK濃度は,8.7±0.9pMで,CD群2.6±0.3とコントロール群6.4±0.6に比べ有意に高値であった.2)16週観察群;CD群の総胆管最大径は4.9±0.5mmで他の2群に比べ有意に高値であった.CI群のCCK濃度は6.3±2.0pMであったが他の2群とは有意差はなかった.肝外胆管癌の発生率はCD群27%,CI群9%,コントロール群0%で,胆嚢癌の発生率はCD群46%,CI群13%,コントロール群0%であり,CD群はコントロール群に比べいずれも有意に高値であった.非癌部肝外胆管上皮のPCNA-LIは,CD群26.0±1.5,CI群0.9±0.5,コントロール群0.3±0.1で,非癌部胆嚢上皮のPCNA-LIは,CD群33.8±2.3,CI群6.3±0.8,コントロール群0.4±0.3であり,いずれもCD群は他の2群に比べ,CI群はコントロール群に比べ有意に高値であった. 結論:膵液と胆汁を含んだ十二指腸液逆流による細胞増殖刺激が肝外胆管拡張と肝外胆管癌と胆嚢癌の発生を惹起している可能性が示唆された.
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