1994 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト唾液腺由来腺癌細胞におけるオートクリン増殖シグナル機構
Project/Area Number |
06454525
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
太田 稔 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (70048255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
客本 斉子 岩手医科大学, 歯学部, 助手 (90118274)
根本 孝幸 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (90164665)
佐藤 詔子 岩手医科大学, 歯学部, 助教授 (00048399)
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Keywords | オートクリン増殖 / EGFレセプター / 高分子量EGF / c-erbB2 / ヒト顎下腺細胞 / チロシンリン酸化 |
Research Abstract |
HSG細胞のオートクリン増殖シグナル伝達系の詳細を明らかにすべく研究を行ってきた。本年度はまず、EGF様分子による増殖シグナル伝達系の下流にc-erbB2タンパクの関与があるか否かを検討した。このためにまず、抗EGF抗体結合アフィニティーカラムを用いてEGF様分子を精製し、続いてこのEGF様分子をHSG細胞培養系へ加え、以下の実験を行った。 1.細胞数ならびに[^3H]チミジンの取り込みを測定したところ、両者共に加えたEGF様分子の用量依存的に増加しHSG細胞の増殖促進効果が認められた。 2.EGF様分子による増殖促進効果発現過程へのc-erbB2タンパクの関与を、抗体による増殖阻害実験により検討した。抗EGF,抗EGFレセプター,抗c-erbB2抗体を培養系に加えると、それぞれ単独で増殖阻害を誘導するとともに、EGF様分子により誘導される増殖促進効果に対しても強い阻害効果を示した。なかでも抗c-erbB2抗体による阻害効果がもっとも強く、c-erbB2タンパクのオートクリン増殖への関与が明らかとなった。 3.EGF様分子をHSG細胞培養系に加えると、約170Kならびに340Kタンパクがチロシン特異的にリン酸化を受けた。このうち170Kの分子はEGFレセプターであることが明らかとなつた。しかし、340Kの分子に関しては不明であり、EGFレセプターやc-erbB2タンパクを含む二量体である可能性も考えられた。そこで、EGF様分子を添加後、細胞可溶化物を抗EGFレセプターあるいは抗c-erbB2抗体で免疫沈降させ、チロシンリン酸化抗体を用いてウェスタンブロットにより検出したところ340K分子は認められなかった。この結果から、340KタンパクにはEGFレセプターおよびc-erbB2タンパクが含まれないことが明らかとなった。340K分子の同定に関しては今後の課題と考える。 以上、本年度の実験結果からEGFレセプターは、EGF様分子、すなわち、高分子量EGFの直接のレセプターとして機能しており、その伝達系の下流にc-erbB2タンパクが存在することが明らかとなった。これらの結果は高分子量EGFの作用機構解明へむけてのひとつの手がかりとなるものと考えられる。なお、シグナル伝達系におけるc-erbB2の作用点を含めたリン酸化カスケードに関しては以後検討する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Nagai,M.,Nemoto,T.and Ota,M.: "Mobility of digoxygenin-dUTP polymerase chain reaction products and detection of single-stranded products in agarose gel electrophoresis." Anal.Bio chem.221. 208-210 (1994)
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[Publications] Kyakumoto,S.,Kurokawa,R.Hoshino,M.and Ota,M.: "Co-expression of epidermal growth factor-receptor and c-erbB2 protooncogene product in human salivary gland adenocarcinoma cell line HSG and the implications for HSG cell autocrine growth." Archs.oral Biol.39. 569-580 (1994)
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[Publications] Nemoto,T.,Ohara-Nemoto,Y.Shimazaki,S.and Ota,M.: "Dimerization characteristics ofthe DNA-and steroid-binding domains ofthe androgen receptor." J.Steroid Biochem.Mol.Biol.50. 225-233 (1994)
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[Publications] Nagai,M.,Nemoto T.,Masuda,T.and Ota M.: "Down-regulation of androgen receptor mRNA level in mouse submandibular gland by testosterone." Endocrine J.42. 31-38 (1995)
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[Publications] 客本斉子、根本孝幸、星野正行、太田稔: "ヒト顎下腺腺癌細胞株(HSG)におけるRXRファミリーの発現" 口腔組織培養研究誌. 4. in press (1995)
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[Publications] 客本斉子、星野正行、佐藤詔子、太田稔: "ヒト顎下腺由来腺癌細胞株(HSG)におけるレチノイン酸レセプターとレスポンスエレメントとの結合" 岩手歯誌. 19. 19-29 (1994)