1995 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト唾液腺由来腺癌細胞 におけるオートクリン増殖シグナル機構
Project/Area Number |
06454525
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
太田 稔 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (70048255)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 雅純 岩手医科大学, 歯学部, 助手 (00217960)
客本 斉子 岩手医科大学, 歯学部, 助手 (90118274)
根本 孝幸 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (90164665)
佐藤 詔子 岩手医科大学, 歯学部, 助教授 (00048399)
|
Keywords | リン酸化シグナル / EGFレセプター / EGF / c-erbB2 / ヒト顎下腺細胞株 / トランスフェクション / MAP-キナーゼ / c-fos |
Research Abstract |
本年度は昨年度にひき続き、EGF様分子によるシグナル伝達について詮索した。これまでにEGF様分子はEGFレセプターに結合しリン酸化カスケードを駆動させることが明かとなったので、まずはじめに、EGFレセプター以降のリン酸化シグナル伝達について検討した。一般に、EGFシグナル伝達系の下流にはMitogen activated protein kinase (MAPK)カスケードが存在することが明かとなってきている。そこで、外来性のEGFに対し増殖応答性の高いHSGサブクローンのひとつHSGAZA3細胞を用いてEGF刺激がMAPKへ及ぼす影響を調べた。EGF処理後経時的にMAPKをイムノブロット法により調べたところ、処理後5-15分でMAPKのリン酸化が顕著に誘導され、その後3時間まで維持された。つぎに、増殖シグナルが核内転写制御因子であるFosやMycのリン酸化やこれらタンパクの発現誘導に及ぼす影響について検索した。抗Fos抗体を用いたイムノブロット法により、EGF処理後1-3時間でFosタンパクのバンドの強度が顕著に増加するとともに、リン酸化されたFosのバンドが新たに出現した。RT-PCR法を用いmRNAレベルでc-fosならびにc-mycmRNAの発現を調べたところ、EGF処理後c-fos mRNAでは30分、c-myc mRNAでは2時間で有意にかつ一過的に上昇した。これらの結果から、EGFのリン酸化シグナルはMAPKを介し核内Fosへと伝達されること、またFosやMycの発現誘導がEGFによる増殖促進に先だって起こることが明らかとなった。 つぎに、オートクリン増殖を制御するレチノイン酸が、HSG核内に存在するレセプターを介し転写レベルで作用しているかを調べるために、HSG細胞にレチノイン酸応答配列を有するルシフェラーゼレポータージーンを導入し、転写活性化能を検討した。導入されたレポータージーンからの転写活性、すなわちルシフェラーゼ活性はレチノイン酸処理により約2-3倍に増加し、内在性のレチノイン酸レセプターはin vivoにおいて生理作用を担っていることが強く示唆された。
|
-
[Publications] 客本斉子: "ヒト顎下腺細胞株(HSG)におけるRXRファミリーの発現" 口腔組織培養研究会誌. 4 (1). 55-65 (1995)
-
[Publications] Nemoto, T.: "Identification of dimeric structure of proteins by use of the glitathione S-transferase-fusion expression system" Anal. Biochem.227, (2). 396-399 (1995)
-
[Publications] 澤野桂子: "ヒト顎下腺由来腺癌細胞株における上皮成長因子(EGF)の増殖機構の解析" 岩手医大歯誌. 20 (2). 198-211 (1995)
-
[Publications] Nemoto, T.: "Mechanism of dimer formation ofthe 90-kDa heat shock protein" Eur. J. Biochem.223 (1). 1-8 (1995)
-
[Publications] Nagai, M.: "Reduction of androgen receptor mRNA concentration by testosterone in mouse submandibular gland" Endocrine J.42 (1). 31-38 (1995)
-
[Publications] Sato, N.: "Proliferative signal transduction by epidermal grouth factor (EGF) in the human salivary gland adenocarcinoma (HSG) cell line" Biochem. Mol. Biol. Int.38 (in press). (1996)
-
[Publications] 太田稔: "ヒト顎下腺由来腺癌細胞株における増殖と文化(総説)" Human Cell. 9 (in press). (1996)
-
[Publications] 客本斉子: "ヒト顎下腺腺癌細胞株(HSG)におけるレチノイン酸レセプターによる転写活性化" 口腔組織培養研究会誌. 5 (1) (in press). (1996)