1995 Fiscal Year Annual Research Report
根尖性歯周炎の破壊進行に関与する炎症性サイトカインの分子生物学的研究
Project/Area Number |
06454546
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鶴町 保 日本大学, 歯学部, 講師 (60139201)
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Keywords | 根尖性歯周炎 / サイトカイン / RT-PCR法 / 遺伝子 / 分子生物学 |
Research Abstract |
根尖部歯周組織の骨吸収に免疫応答が深く関与していることが明らかとなり、病変部における骨吸収の作用分子(effector molecules)として炎症性サイトカインが注目されるようになった。根尖性歯周炎に関してはこれらサイトカインのネットワークが成立に不可欠であるとの報告のみで、詳しい産生状態については不明な点が多い。そこで本年は、根尖切除によって得られた病巣組織を免疫組織学的に検索し、さらに同組織から抽出したRNA、および根管滲出液細胞成分から抽出したRNAを用いてRT-PCR法を行い、サイトカイン遺伝子発現を分子生物学的に検索した。その結果、病巣内ではIL-1βとTNFのサイトカイン遺伝子の発現が亢進していることが確認された。IL-1βやTNFが高い骨吸収活性を有することは、in vivoやin vitroで明らかにされており、根尖病巣の骨破壊の調節に重要な役割を担っていることは容易に推察された。IL-1βやTNFの産生細胞としては、炎症刺激を受けて活性化したマクロファージが主体であるとする考えが一般的であるが、病変内に多数存在したTリンパ球の直接的あるいは間接的な関与も十分考えられ今後の検討課題である。 多形核白血球が産生するサイトカインを把握することが重要と考えRT-PCR法による遺伝子発現の検討を試みた。その結果、IL-1α、βおよびTNF産生能を有していることが示された。さらに、同細胞からのサイトカイン遺伝子発現と臨床パラメーターとの相関関係を検索したところ、IL-1β遺伝子の発現が慢性型の症例に比べて急性型の症例で有意に強い発現を示し、また急性型の症例でβはαに比較して強い発現を示した。破骨細胞活性化因子の一つとされているIL-1βは、歯槽骨骨吸収にとどまらず、さまざまな組織障害を示すことから、炎症の活動部位か否かはこの活性の強弱によって知ることが可能であると思われる。一方、根尖性歯周炎の病態の全てを単一因子の動態によって捉えることは限界があり、さらに詳細な病態解析を行うには、より多面的な解析が必要であると思われる。
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[Publications] TAKEICHI, O., SAITO, I., TSURUMACHI, T., SAITO, T., MORO, I.: "Human polymorphonuclear leukocytes derived from chronically inflamed tissue express inflammatory cytokines in vivo." Cellular Immunology. 156. 296-309 (1994)
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[Publications] 鶴町 保: "排膿の科学 1. 根管滲出液の診査で病態はどこまでわかるか" ザ・クインテッセンス. 14. 72-75 (1995)
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[Publications] 鶴町 保: "排膿の科学 2. 排膿された液中の白血球が病態に与える影響について、多形核白血球の機能" ザ・クインテッセンス. 14. 48-53 (1995)
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[Publications] 鶴町 保,黄 自: "排膿の科学 3. 排膿処置を積極的に考えた根管拡大・形成法" ザ・クインテッセンス. 14. 41-47 (1995)
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[Publications] 鶴町 保: "排膿の科学 4. 検証・なぜ滲出液は止まらなかったか" ザ・クインテッセンス. 14. 47-54 (1995)
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[Publications] TAKEICHI, O., SAITO, I., TSURUMACHI, T., MORO, I. SAITO, T.: "Expression of inflammatory cytokine genes in vivo by human alveolar bone-derived polymorphonuclear leukocytes isolated from chronically inflamed sites of bone resorption.(in press)" Calcified Tissue International. 58. (1996)