1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06454612
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 洋 東京大学, 薬学部, 教授 (00012625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 信好 東京大学, 薬学部, 助手 (20201692)
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Keywords | 海馬 / 神経突起再生 / 成長円錐 / ポリアミン / プトレシン / スペルミジン / スペルミン |
Research Abstract |
我々は既に、ポリアミンの一つであるスペルミンが、脳神経細胞に対して栄養因子として働くことを明らかにしてきた。一方、脳虚血に伴って脳内にポリアミン合成酵素及びポリアミン濃度が増加することが報告されており、病理的状態での神経回路の形成、再生過程に対するポリアミンの役割に興味が持たれた。そこで本年度の研究では、培養神経細胞の軸索損傷後の神経突起の再生過程に対するポリアミンの作用を検討した。胎生18日目のラット脳より海馬を摘出し、神経細胞を初代培養した。3日間の前培養で十分に神経突起形成が見られた細胞を選び、その位置をコンピューターに記憶させ、軸索突起を成長円錐の基部でレーザー光により切断し、ポリアミンを添加した。添加直前、添加24及び48時間後に、同一神経細胞の写真を撮影し、各種の形態パラメーターを測定した。その結果、スペルミン、スペルミジンおよびプトレシンのすべてのポリアミンが、成長円錐損傷後の基部からの突起再伸展を強く促進した。最大効果を惹起するポリアミン濃度はすべて10nMであり、それぞれのポリアミンを併用しても相加および相乗効果は認められなかった。塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)は培養海馬神経細胞の再生突起の分岐を促進する。スペルミンとbFGFを同時添加したところ、損傷部位からの突起再伸展および分岐形成の両方の作用が確認された。本研究の結果より、ポリアミンが神経細胞の再生に重要な役割を果たしている可能性が考えられた。また、相加・相乗効果が見られなかったことより、3種のポリアミンは共通のメカニズムを介して作用していると思われた。さらに、スペルミンとbFGFの作用比較と併用効果の結果から、軸索の再伸展と分岐形成はそれぞれ独立した機構により調節されていると考えられた。
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[Publications] P.J.Chu,H.Saito,K.Abe: "Polyamines promote regeneration of injured axon of cultured rat hippocampalneurons." Brain Research. (in press). (1995)
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[Publications] 宮川武彦,齋藤洋: "抗痴呆薬開発のための実験手技(5)-初代培養神経細胞を用いた突起再生の評価法" 日本神経精神薬理学雑誌. 14. 299-303 (1994)
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[Publications] 西山信好,齋藤洋: "ポリアミンの栄養因子作用" Clinical Neuroscience. 13(印刷中). (1995)