Research Abstract |
1972年より行われた,各地の潜在自然植生高木種幼苗植栽(1〜3本/m^2の密植)による日本列島の環境保全林は,その後の植栽地もあり,1〜23年生の林分まであげられる。本年は,一般研究(B)Bの第2年度研究として,1.横浜国立大学キャンバス内の補足環境測定器による環境動態,機能動態の比較,2.北海道,東北,関東各地の環境保全林保全林植栽地の生長動態,種多様性比較,3.資料解析機器による生長速度,環境比較を行った。 1.横浜国立大学構内の環境保全林環境測定器は,初年度のタヌキによるいたずら対策をエンビ管を使うことで対処でき,データ採取が可能となった。雨量,照度,地表面温度は林内外で極端な差が測定された。本年度は土壌水分計,湿度計が設置され環境動態の追加測定が準備された。 2.環境保全林現地調査は,横浜国立大学キャンパスを中心に,北海道(10年生),栃木県(10年生),長野県(3年),徳島県(半年),静岡県(1,2,3年生),沖縄県(15年生)の植栽地で行われた。北海道,栃木県,長野県では,典型的夏緑広葉樹林域で,1〜2本の疎植栽では,伸長が遅い。気温,生長期間も短い(落葉,紅葉期間は光合性なし)為,常緑広葉樹植栽地に比較して極めて生長が遅い。北海道では,ヤナギ類の生杭を何本も挿し木にしたが,ヤマハンノキなどのパイオニア種と一緒に早く生長し,高木層を被ってしまった為,ミズナラ,シナノキ,ナナカマドなどの種群が林床でゆっくり生長していた。外観はヤナギ林であり,パイオニア種と混植する場合は途中でバイオニア種を伐採するなどの管理が必要である。新たに5〜6本/m^2の高木・低木混植落葉樹植栽実験をプラスした。1年後の生長データが楽しみである。 3.環境保全林および周辺の自然林・二次林との種多様性比較では,常緑広葉樹林北限域の関東,とくに横浜国立大学構内環境保全林は,芽生えも含め20年生の若齢林を形成しており,20年生の管理していない落葉二次林よりは種多様性が高い結果を得た。北海道の10年生では,林床の草本は殆ど周辺の自然林とかわらず,木本種の増加のみが今後期待される。
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