Research Abstract |
1972年より行われた,各地の潜在自然植生高木種植栽(1〜3本m^2の密植)による日本列島の環境保全林は,その後の植栽地もあり,1〜23年生の林分まであげられる。本年は,基盤研究(B)の第3年度研究とまとめとして1.平成6〜8年度の生長データの分析,2.環境測定器による環境動態の比較,3.種様性回復度の比較,4.環境保全林形成手法による自然林回復および種多様性回復度と,自然林の遷移速度の比較,5.環境保全林・種多様性回復手法の確立化を行った。 1.生長データでは,常緑広葉樹林は10年まで年間1m前後,時にはそれ以上の伸長生長を示し,従来の教科書による,常緑広葉樹の生長は遅いという常識をくつがえした。10mを超えてから伸長がゆるやかになり,肥大生長にかわった。平坦地よりも斜面の生長が良好で,また個体や種により生長能力が異なり,いちがいに同年代が同じ太さ高さをもつといえない。夏緑広葉樹では密植するほど生長がよいが,樹種により,生長の差がはっきり現れ,遅い種は最後まで日陰で耐え,結局最後まで遅いデータがしめされた。 2.環境測定では7月に照度計が盗難にあい、林外の測定が不可能になったが,雨量,気温,湿度,地表温度について林内,林外の対比データを得た。林内は環境変動が少ない。林外では変動がきわめて高い。森林の気象緩和機能を証明したと同時に差が確認された。3.種多様性は,鳥散布の植物が林内に回復し易く,密植植栽後,林内がうっぺいする4〜5年以降より10種以上に増加する。8年以降より植栽樹種のブナ科植物の幼苗が進入する。4.潜在自然高木樹種幼苗の植栽は,自然の遷移の約50〜80年間の先取りをする(横浜国立大学キャンパス内の比較例)。5.以上より環境保全林即ち自然林および種多様性回復には常緑広葉樹林では1〜2本/m^2の潜在自然高木に1/m^2の低木の混植・密植,夏緑広葉樹林では3〜6本の寄植えで,2〜3箇所/m^2の密植がきわめて生長促進することが判明した。さらにマルチングや,土壌の排水なども重要な条件となる。
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