1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06454660
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
矢野 雅文 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (80119635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 悌也 東北大学, 電気通信研究所, 助手 (90250844)
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Keywords | 神経回路網 / 多形回路 / モノアミン / 脳の情報処理 |
Research Abstract |
神経回路網は優れて多様な情報処理機能を発揮する。一般に神経回路網は同じ回路網を使って異なる情報処理が可能であると考えられており、それを神経回路網の多形性と呼ぶ。神経回路の多形性は主に運動制御系でみられているが、記憶の分散表現にも欠かせない性質であり、多形回路の生じる機構を明らかにすることは脳の機能を明らかにする上で極めて重要である。前年度までの研究より多形性の生成には、ドーパミン、セロトニンなどのモノアミン類が神経細胞の電気的特性を変化させることが本質的に重要であることを明らかにした。 本年度は、下等動物であるナメクジの神経節より匂い情報処理に重要と考えられる神経回路網を単離培養し、感覚情報処理系の神経回路網での多形性生成の研究を行った。神経節を組織学的に調べ、この神経回路網にモノアミン(ドーパミン、セロトニン)がネットワーク全体に非特異的に広く投射していることを確認した。さらにネットワークににおける情報処理に深く関わると思われる局所場電位(LFP)を測定し、モノアミンがLFPの振動特性を大きく変えることを見いだした。これは感覚器に同じ刺激が与えられてもネットワークの多形性により異なる情報処理が可能であり、知覚系神経回路網の多機能性という意味で非常に重要と思われる。多形性の評価には回路網全体にわりる神経活動の観察が不可欠であり、現在、感覚情報を与えたときのネットワーク全体の活動をフォトダイオードアレイを用いて光学的に測定している。 また、モノアミンは細胞内カルシウムを介してその効果を発現することから、神経回路網を結合振動子系によりモデル化し、ネットワークにおける細胞内カルシウムの調節機構を理論的に検証した。これにより、回路網全体でのカルシウムパターンが自在にコントロールしうることが明らかとなった。これは、神経回路網での多形性をどのようにコントロールするかの指針となる。また、カルシウムはシナプス可塑性とも深く関わることから、神経回路網における記憶の表現においても重要な知見と思われる。
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