1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06454668
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊谷 泉 東京大学, 工学部, 助教授 (10161689)
|
Keywords | 繊維状ファージ / 抗体 / 分子認識 / リゾチーム / タンパク質工学 |
Research Abstract |
繊維状ファージのコートタンパク質に異種タンパク質を融合し機能を保持したまま提示するシステムを利用すれば無作為な変異導入により創成されるタンパク質の構造・機能を迅速に選択できる。本研究ではリゾチームとそのモノクローナル抗体、HyHEL10に着目し、HyHEL10の可変領域(Fv断片)を繊維状ファージ上に提示するための実験系を確立し、超可変領域を改変することにより抗原性の異なる相同タンパク質を認識しうる抗体の人工的作製を目指している。今年度は一本鎖Fv断片を既に確立したT7-プロモーターとpelB-ジクナルペプチドを利用したFv断片の大腸菌の分泌発現系を改良して作製した。汎用のリンカー(GGGS)_3を用いて一本鎖Fv断片の調製を試みたが、アミノ末端からVH-リンカー-VLと並べると大腸菌で殆ど発現しないのに対して、VL-リンカー-VHと並べる充分な分泌発現が見られた。精製した一本鎖Fv断片は抗原リゾチームと充分な結合活性を示したが、結合定数を酵素活性の阻害、滴定型熱量測定計を用いて測定すると、元のFv断片より半分程度に低下していることを見いだした。そして、この結合定数の低下は結合反応におけるエントロピーの損失によっていることを明らかにした。通常Fv断片を一本鎖化すると、抗原に対する結合活性は低下するが、その原因としては主にリンカーによる立体障害等のエンタルピー項の低下を招くためと考えられていたが、本研究での詳細な熱力学的解析から得られた結果は、エントロピー項の低下が主たる原因であることを示している。以上のように、一本鎖抗体を作成する上で考慮すべき問題点を明確にすることができた。また、これら一本鎖FvをM13ファージコートタンパク質上に提示すると、やはりVL-リンカー-VHの組み合せのみ抗原リソチームとの結合活性を示すことを明らかにした。
|
-
[Publications] K,Maenaka: "Functional and structural role of a tryptophan generally observed in protein-carbohydrate interaction-Trp62 of hen egg-white lysozyme" J.Biol.Chem.269. 7070-7075 (1994)
-
[Publications] K.Tsumoto: "Effect of the order of antibody variable regions of the expression of the single-chain HyHEL 10 Fv fragment in E.coil and the thermodynamic analysis of its antigen-binding properties" Biochem.Biophys.Res.Commun.20. 546-551 (1994)
-
[Publications] K.Tsumoto: "Contribution to antibody-antigen interaction of structurally perturbed antigenic residues upon antibody binding" J.Biol.Chem.269. 28777-28782 (1994)