1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06454686
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小池 達郎 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80128131)
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Keywords | アポトーシス / プログラム細胞死 / カルシウム / 小胞体 / 分子シヤペロン / クロマチン凝縮 / C-fos / 上頸神経節 |
Research Abstract |
(1)細胞内カルシウム濃度の低下はアポトーシスによるニューロン死を誘発する。 我々は神経細胞生存に関する細胞内Ca2^+ウィンドウの存在を仮定し、Ca2^+イオン濃度がより高い領域もより低い領域も細胞死が起こると考えた。更に、NGF除去すると細胞内Ca2^+イオン濃度の低下が起こり、これがトリッガ-となって細胞死に至ることを想定した。この仮説の当否を検討した。末梢(上頸神経節細胞)及び中枢(小脳顆粒細胞)神経細胞をカルシウムキレート剤BAPTA-AM及びその誘導体で処理することによりアポトーシスを誘発した。アポトーシスの判定は、細胞体の収縮、ビスベンザミド染色による特徴的な染色体の凝縮、Apop-Tag法及び電子顕微鏡観察により確かめた。同時に、細胞内カルシウム濃度をfura-2標識して画像解析装置でモニターするとカルシウムキレート剤処理によりカルシウムレベルは低下した。さらにこのニューロン死は染色体の凝縮の前にc-fosの核への移行を伴い、タンパク質合成RNA合成を必要とする積極的な細胞死であった。 (2)プログラム細胞死過程で活性化するメッセージの同定 神経栄養因子除去によるアポトーシス過程で活性化する遺伝子を探索したところ、BiP/GRP78が著しく活性化することを見いだした。熱ショック蛋白質HPS70ファミリーのうちBiP/GRP78は小胞体のみに存在し、タンパク質の膜透過、立体構造の安定化に必要な分子シャペロンである。我々はプログラム神経細胞死においてBiP/GRP78が小胞体カルシウムと結合しているという示唆から、細胞死と小胞体カルシウム調節機構とは関わり合っていると考えられた。実際、BAPTA-AM、Thapsigargin、calcium ionophoreなどで処理するとBiP/GRP78は活性化された。このような事実から小胞体からゴルジ装置に至る細胞内シグナリングメカニズムの解明が神経細胞死カスケードの解明を導く糸口になる可能性がある。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 中山 恒: "培養上頸神経節細胞のアポトーシスのCa^<2+>による制御" 神経化学. 34. 244-245 (1995)
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[Publications] 小池達郎: "神経細胞死制御と細胞内カルシウム" ディメンシア. 9. 411-418 (1995)
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[Publications] 高島明彦: "神経細胞は何故死ぬのか?" 生物物理. 35. 272-276 (1995)
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[Publications] K.Nakayama: "Depletion of Internal Calcium Triggers Neuronal Apoptosis" Soc.Neurosci. 21. 1303 (1995)
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[Publications] 小池達郎: "細胞内カルシウムレベルは神経細胞死をどう制御しているのか?" 神経進歩. 40. 227-235 (1996)
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[Publications] S.Tanaka: "Up-regulation of L-type Ca^<2+> channel Associated with the Developneit of Elevated K^+ Mediated Survival of SCCT cells in vitro." Developmental Biology. 168. 166-178 (1995)
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[Publications] 鈴木和彦: "アポトーシス研究の最前線(分担)" 羊土社, 238 (1995)
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[Publications] 神村章子: "アポトーシス実験法(分担)" 羊土社, 283 (1995)