1995 Fiscal Year Annual Research Report
神経発生および神経変性におけるαB-クリスタリンの役割
Project/Area Number |
06454694
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
岩城 徹 九州大学, 医学部, 助教授 (40221098)
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Keywords | アストロサイト / グリア細胞 / αB-クリスタリン / 熱ショック / 細胞骨格 / 遺伝子導入 |
Research Abstract |
αB-クリスタリンがグリア細胞内で具体的にどのような機能を果たしているのかを明らかにする目的で、グリオーマ細胞株にαB-クリスタリンの遺伝子導入を行ないαB-クリスタリンの発現量の異なる細胞株を得た。このモデルを用いて細胞外K^+濃度の上昇がグリア細胞に及ぼす細胞障害の影響を解析し、αB-クリスタリンがこの細胞障害に対して保護的に働くことを明らかにした。一般に神経組織に破壊性病変が生じると、細胞外腔のK^+濃度は異常に上昇しグリア細胞体の腫脹と細胞死を引き起こすことが知られている。我々の研究結果から、神経細胞死に引き続いて起こる細胞外K^+濃度の上昇に応じてαB-クリスタリンは反応性グリア細胞に蓄積し、その細胞骨格構造の安定化に関与しグリア細胞の細胞死を防いでその生存を助長していると考えられた。ついで化学合成したアンチセンスオリゴマーによる発現抑制系を培養細胞レベルおよび個体レベルで作製するべく実験モデルの作製に取り組んだ。アンチセンスオリゴマーによる発現抑制の程度を定量的に測定することができるようにELISA法によるαB-クリスタリン測定系を確立した。この方法と酵素抗体法による免疫染色の両方を用いてアンチセンスオリゴマーによる影響を検討した。個体レベルでは浸透圧ポンプを用いたラット脳室内持続投与の方法も確立した。まず培養細胞系でリポフェクチンを併用したアンチセンスオリゴマーの投与実験を行なった。濃度を5μMまで増量してみたが蛋白質レベルでは有意な変化がみられず、αB-クリスタリン蛋白質の細胞内寿命が長い可能性があり、RIラベルによる蛋白質代謝について検討を加えている。さらに個体レベルにおける恒常的高発現のモデルとしてGFAPのプロモーターをもちいたトランスジェニックマウスの作製にあらたに取り組み、現在は遺伝子導入したマウスの解析をする段階となっている。
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[Publications] Hitotsumatsu, T.: "Cytoplasmic inclusions of astrocytic elements of glial tumors: special reference to round granulated body and eosinophilic hyaline droplets." Acta Neuropathol.88. 501-510 (1994)
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[Publications] Hitotsumatsu, T.: "Distinctive immunohistochemical profiles of small heat shock proteins(heat shock protein 28 and αB-crystallin) in human brain tumors." Cancer. 77. 352-361 (1996)