1994 Fiscal Year Annual Research Report
サケ体内磁気センサの検証と卵から稚魚への成長に伴なう磁気センサ形成過程の解明
Project/Area Number |
06455004
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
榊 陽 千葉大学, 工学部, 教授 (80005280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小倉 未基 水産庁, 東北区水産研究所・資源管理部, 研究員
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Keywords | シロザケ / ベニザケ / ヒメマス / 回遊 / 磁気コンパス / 磁界中の行動実験 |
Research Abstract |
1.ヒメマスの磁界中における行動実験:ベニザケの陸封種であるヒメマス成魚の磁界検知機能の有無確認のために、水槽にコイルを取り付け磁界印加後10秒を経て電撃を与える装置を用意した。磁界は電撃の前触れなので磁界検知能力があれば、ヒメマスは磁界の印加で、電撃が加えられることを察知して安全な場所へ逃避すると考えられる。対象実験として磁界の代わりに光を照射する実験も行った。各実験とも600回行った。実験によると光照射の場合には100回目辺りから学習が進み、以後回を重ねる毎に確実に安全地帯に逃避する傾向が強まった。これに対して磁界印加の場合には、400回を越す辺りから安全地帯に逃れる傾向が認められるようになった。これらの実験結果から、ヒメマスの感覚としては視覚が優先し、磁気感覚は優先順位としてはかなり低位にあるものと判定される。 2.外洋におけるシロザケに磁界外乱を与えた場合の行動追跡実験:日本に回帰中のシロザケの成魚を千島列島沿いの海域でとらえ、外乱磁界発生用コイル、コイル電流制御装置および追跡用超音波発信器を取り付けたうえ放流してその行動を追跡した。サケが磁気を感知できるならば、コイルに電流が流れて地磁気が乱れたと感じるとき、通常の回帰経路から外れる可能性が期待できることになる。今回の実験は悪天候に阻まれて長時間の追跡が出来なかったので、結論を出すには至らなかった。しかしながらサケがたとえ母川方向からずれようとも、海流に沿って行動しているという、全く新しい知見を得た。この結果は、サケはなるべくエネルギーを消費しないように行動していると見られること、海流から抜け出して母川に向かうには何らかのコンパスがもう一つ必要なことなどを示唆している。これらの点については来年度もう一度実験を行う予定である。
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