Research Abstract |
本年度は,五頭山地から新潟平野に過去約5000年間に流出した土砂流堆積物の層序を確立し,五頭山地でのこの期間の土石流の歴史を復元すること,また,これにともなう問題点と調査課題の把握を目的とした。 1.この目的にそってつぎの調査を実施した。(1)福島潟2孔,平野部4孔計55mのオールコアボーリング,(2)平野部4地点の発掘調査,(3)平野部でのサウデイング調査,(4)有機物試料の^<14>C年代測定と花粉化石分析。 2.その結果,次の成果をえ,また次年度以後の調査課題についての検討を加えた。 (1)1967年災害前の歴史時代の土石流発生は,堆積物の層序と遺跡の関係,古い洪水の記録,伝承などをもとに,新しい方から1646年,1536年,1092年,601年に発生したと推測できる。また,縄紋時代の約5000〜6000年の1000年間に大規模な土石流の集中発生期が存在した可能性が大きい。 (2)土石流は,五頭山地のなかでも偏在的に発生している可能性が強い。たとえば,1536年土石流は山地中部の水系で発生,1967年土石流は,南部の水系で発生し,中部の水系では認められない。 (3)これらは,土石流の発生原因と防災対策を検討する際の貴重な基礎資料である。従来このような点の解明とそれにもとずく解析例は知られていない。 (4)平野部における歴史時代の土石流堆積物は,地盤の浅層部を構成し,農地の基礎として,また住宅の支持基盤として住民の生活と密接な関連をもつ。この層序と分布を明らかにすることは,有効な土地利用計画の基礎資料の作成とも一致する。 (5)調査地域では,弥生時代,古墳時代中〜後期など遺跡が激減する時代の存在が指摘されている。この原因として,考古・歴史学的な検討とともに,自然環境の変遷,土石流災害との関連の検討が今後の大きな課題である。
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